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★ネット改定版 ★  

第5回 飯島愛「プラトニック・セックス」、
     勝俣州和「ごちゃごちゃ言ってないで誰が一番馬鹿か決めればいいんだ!」

 

飯島愛の「プラトニック・セックス」が、
今、股股、旬である。

昨年10月出版、瞬く間に100万部を突破、
大ベストセラーになり話題になった。
この反響は国内に留まらず、
日本芸能界ブームに沸く台湾では異例の翻訳本まで出版された。
今年、8月早くも文庫化されたが、これも70万部を売上げる。

版元の小学館としては、今までの販売記録が、
かつてのベストセラー本「日本国憲法」であるだけに、
飯島愛は、ある意味、日本の憲法の記録を超え、
憲法改正を果たしたのである。

それだけじゃない、
今秋、テレビドラマ化されると「ヤクルト vs 巨人」の
天王山を上回る高視聴率を獲得、
さらにBS放送でドキュメンタリー化、
東宝で映画化とメディアミックスで続く。

ちなみに映画料金が1800円と知って飯島愛の提案で
初日から一週間、女子高生限定で1000円興行になったのも画期的なこと。
さらに言えば、
全国各地のレンタルビデオ店のAV棚には、飯島愛コーナーが復活した、
ブームの裏腹効果も見逃せない。

このように一冊の本から、打ち出の小槌のように、
次々と商売を生み出す、まさにドミノ倒し状態でなのである。
いやいや、タレント本業界としては、
これは「ドミノ倒し」ではなく正確には
「積み木くずし」状態と言うべきであろう。

この飯島本と同じような現象を生んだ、本がかってあったのだ。
昭和のタレント本として、驚異的な280万部を売り上げ、
ドラマ化されるとテレビ史に記録的な
45%を超える視聴率を叩き出した非行少女ジャンルの先駆的作品、
穂積隆信の「積み木くずし」以来の大ヒットなのである。

この2例を見れば、銀行の「不良」債権とは逆に、
芸能人の「不良」体験は時として巨万の富を産み出すのである。

しかし、正直言って、
当初、これほどの売れ行きを誰が予想したであろうか?

昨年8月、飯島愛は
テレビ東京『クイズ赤恥青恥』の楽屋で、俺に向かって、
「今さぁ、アタシ…自叙伝みたいナノ…書いてんだけどぉ…
 もぉう、煮詰まっつやってさぁ……博士、手伝ってくんない、
 ちゃんとギャラあげるからさぁ…、もう…アタシ、面倒なのよ!」
とのたまわった。

確かにこれは社交辞令とは言え、この時、
なんで俺は、お言葉に甘えて、この提案に一口乗らなかったのか、
いや、むしろ、そのまま飯島愛との援助交際、いや、印税契約を交わし、
一攫千金のチャンスをものにしなかったのか。
今はなんとも悔いてならない。

それにしても長年、飯島愛はテレビタレント活動のなかで、
かつてのAV時代をアンタチャブルなこととし、
他のタレント、共演者も、
一切、触れることが出来ないことにしていたのである。
「そこを避けて書いてる自叙伝なら読みたくないし、
 むしろ赤っ恥も青っ恥もおっぴろげで書いてるんだったら!
 俺は、その本、読むよ!」
と俺はその時、愛ちゃんに言った。

そして本が刷り上ると、楽屋で
「はい!これ。誰でも本を進呈するわけじゃないのよ。
 古舘伊知郎と大竹まことと伊集院光と浅草キッドだけには、
 あげるから、ちゃんと褒めて欲しいのよ」と。

確かに、その時、同じ番組に出演していた他のタレントには
飯島は渡していなかった。にしても、
「誰にでもするわけじゃないのよ…」なんて、
ナンバーワンキャバクラ嬢の殺し文句ではないか!
まったくバカなふりをしながら、
飯島愛は芸能界のマーケットリサーチの目利きと言うべきか。
 
しかし、この本、一読すれば、AV出演、レイプ、援助交際とか
赤裸々な告白に、ファック、いや、フック(引っかかり)があるが、
底に流れる古典的な「大人は判ってくれない」の定石は外さず、
最後はちゃんと「親子の和解」へと更生するという構成の、
ヒットの法則を踏まえた、なかなか大衆性のある読み物であったのだ。
 
さらに、単行本の帯文句には、「私に舐めさせて」とある。
実はこれ、かなり狙っているコピーだ。
いったい、これがどこかと思って読むと
なんと、 これTアナルUなのである。
いやはや、これは大胆、刺激的で
未開発の分野を掘り起こそうとしている野心満々の策略であったのだ。

飯島愛はこの本の前に処女作
(この人ほど、処女作という言葉が似合わない人も珍しい)として
『どうせバカだと思ってんでしょ!!』
なるタレント本を出版していた。

確かに当時は、タイトル通りに世間の風評はそんなもんだっただろう。
しかし、今回の本は、ベストセラーになったが、
中身もなかなかバカには出来ない芸当である。

飯島のAVは「疑似」だったそうだが、
この本の出来栄えは「ガチンコ」評価に値するのであった。 


それに比べ、今回、もう一冊、取り上げる、
『ごちゃごちゃ言ってないで誰が一番馬鹿か決めればいいんだ!』 
著者はすっかり茶の間で、お馴染み、勝俣州和である。
欽ちゃん、ウンナン、とんねるず、ダウンタウンと、
どんな大物座長芸人と絡んでも、ソツなくこなせる
バラエティー界のスーパーサブであり、
実に爽やかで礼儀正しい体育会系熱血漢である。

さらに、ひねくれものの俺でさえも、
長年、多々いるバラエティー共演者のなかでも
抜群の好感度を感じさせてくれる人格者なのである。

そして、若手テレビ人のなかでも、
並外れたテレビタレント技術の持ち主である。
今年からテレビ朝日の深夜番組「虎の門」で司会をしているが、
3時間の長丁場の生放送を仕切る能力も秀逸であり、
俺たちも出演するディベート・コーナーでの
勝ちゃんの発言は論理性もあり、相手の話の捌き、
受身も極めて上手いのには正直、舌を巻いていた。 

ボケキャラに見えるが、見かけ以上に、したたか、達者であり、
むしろ頭脳派の芸風なのである。

さて、その勝ちゃんのタレント本、
処女作(男なら童貞作と言うべきか)がこの本である。
この本の長いタイトルは、新日本プロレス時代の前田日明が、
世代闘争の際にリング上で発した有名な台詞の「強い」を
「馬鹿」に変えた引用である。 

プロレス好きの筆者らしい。
しかも芸能人に限らず、
交友の深い多くの格闘家のエピソードも登場するのである。
また「これはテレビ界のバーリ・トゥードだ!
みんなまとめてかかって来いツ!」と帯には挑発的に書いてある。

格闘界と芸能界を融合した馬鹿馬鹿しい物語というコンセプトでは、
俺たちが出版した『お笑い男の星座』とテーマがかぶることになる。
しかも、勝ちゃんから番組本番中に
「キッドの本、本屋さんに注文して読んだけど、最高に面白いね〜」
などと言われていたのだ。
この発言は、勝ちゃんの研究熱心さを窺わせた。
いや、もしかしたら、このジャンルで
俺たちと競合する新たなる書き手誕生かと期待さえした。

しかし…この本、実際、手にとってもらえばわかるが、
とにかく半端でなくチャチャ、いや、ちゃち。
つまり幼稚なのだ。

テレビ界の豊富な人脈から自分が見聞した
タレントの馬鹿エピソードを綴るのだが、
例えば少年時代に悪戯で、ロマンスカーを止めた話や、
和田アキコさんとの絡みでバンジ‐ジャンプを強要される話、
一世風靡時代の先輩・哀川翔が昔、
本気でタイガーマスクになりたがっていた〜などと一つ一つは、
興味深く面白いのだが、
その文章としての語り口が大雑把で子供の作文レベルなのである。
ここまで、稚拙であると、不思議に思うのは、
何故、この本を語り下ろしにしなかったのだろう〜ということだ。

これだけ錚々たる有名人メンバーの笑い話なのだから、
重松清など、名うてのプロのゴーストライターを使えば、
相当、面白くなることは間違いないだろう。

しかし、本人直筆の生原稿を差し込んだ装丁を見てもらえばわかるが、
これは確実に本人の文章そのままであり、
しかも、これだけ悪筆で推敲の無い文章も商品としては珍しい。

いや、ここまで底が抜けたレベルは、
むしろ、アウトサイダー・アートの領域に近いのか。
しかし、俺に言わせればタレント本の価値とは、
文章が巧みに書かれていることではなく、
内容が過度に振り切れていれば「買い」なのである。

この本の「馬鹿こそ偉い」と言うロジックも既に古いものだが、
しかし、この本のタイトルにある「一番の馬鹿」ぶりは
看板に偽りなしである。

もしも、そこまで考えてのT直筆Uを選んでいるのだととしたら、
勝ちゃん、恐るべし。


第1回 矢沢永吉著「アー・ユー・ハッピー?」
第2回 いかりや長介「だめだこりゃ」、長嶋一茂「三流」
第3回 小林よしのり「ゴーマニズム宣言」、「新しい歴史教科書」
第4回 吉田豪「男気万字固め」、山城新伍「おこりんぼさびしんぼ」

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