舞台で光る芸人 「芸よし、客よし」の浅草キッド、
 
2時間ぶっ通し漫才! さすが、ビートたけしの弟子!!
文・山中伊知郎 図書新聞2356号より転載 


浅草キッドはエラかった

だぶん6−7年前だろう。
まだテレビに出始めの浅草キッドに、インタビューをしたことがある。
その時、水道橋博士が言っだ印象的な一言。
「ボクらは、殿(ピートたけし)の弟子としちゃ10何番目。
 普通にやってたんじゃ、たけし軍団やセピアを抜けないんです。
 (注・当時、たけし軍団の下に軍団セピアというのもあった)
 ボクらは独自の何かを作らなきゃ、先輩にツブされて消されちゃう」
結果、彼らはエラかった。
数年の時を経て「独自の何か」を出せる芸人にはっきり成長していたのだ。
 
7月26日、TOKYO−FMホールで行われた
「浅草キッドオール漫才リクエストパレード」。
ふたりの漫才だけで2時間以上ブッ通すというのだから、
もうその意気込みだけでも、始まる前から
「あんたの勝ち!」という雰囲気。
 
爆笑間題だって1時間半、
それをさらに30分を超えてしまうとなると、
いわゆるひとつの日本新記録かもしれない。
客層もいい。
「ボキャブラ天国」の影響もあって、
とかく若手お笑い陣がアイドル視され、
ガキの女ばっかりぞろぞろと集まるライブが多い昨今、
異常に男が多い。
しかも20代から30代。大人の男が目立つのだ。
みんな、「浅草キッドなら、やってくれますね!」
といった目をしている。

台風が接近しての大雨にも関わらず、場内、もちろん超満員。
さて、ご両人登場して、初っぱなは軽くボキャ天タネ。
「すいません。ボクら、ボキャ天にも出てないし、
 テレピのレギュラーもないのに、こんなに集まっていただきまして」
これでドッと笑いを取る。
いわば舞台から客に探りを入れたところ。
 
ルックスに清涼感がなく、というよりちょっと気持ち悪く、
ネタもいつ放送コードを踏み外すかわからない危うさを持つ彼らは、
テレビ・メディアではなかなかブレイクできない。
何しろ昔懐かしい浅草フランス座の出身なのだから。
今回の客が、そんな浅草キッドの「立場」を理解し、
さらに「共感」もしていることが、この笑いでわかった。
後はとことん突っ走っても大丈夫。
 
まずは、いきなり例の神戸の事件に引っかけて、
「やっぱし、芸人は通称で呼ばれなきゃね」
「あ、カツシンとかね」
「そう、エノケン、バンジュン、それと最近じやハセジュン」
「バカ、それ芸人じゃないたろ!」

暴投から入って、客も大喜び。
いけると見るや、すぐさまお得意の「サザエさん」ネタで走り出す。

「来週のサザエさんは
 『波平、倒れる』『カツオ、万引き』『ワカメのワレ目』の3本です」
で軽く一発カマして、
またまた多発する少年犯罪に引っかけて、
「『サザエさん』のカツオくん、波平の盆栽を壊しただけで実名報道!」
と衝撃的なニュースネタ。終いには、
「提供は、もんじゅの高速炉を作った東芝でした」
とスポンサーまでネタにしちゃう。
 
ものの10分とかからないうちに、
トップスピードに乗ってしまったふたり。

同じテレビ番組ネタをやるんでも、そこらの若手がやるような
「ビーチボーイズ」だの「失楽園」だの
いかにもイジリやすそうな物はやんない。

「やはり時代とともにバラエティ番粗も変わっていくね。
 我々も現代を語るためには、
 今、最もテレビ界でトンガった番組について語らなきゃいけない」
「何だよ、それは」
「もちろん、『笑点』だよ」

こんなマクラから始まって、
溢れんばかりの「笑点」批判が始まるのだ。
好楽がなぜあんなツマンないのに大喜利に出れるのか、
という謎の解明に始まり、
「最近出来た『お笑い虎の穴』って若手出演コーナーは
 巨人の土井コーチと一緒。若手をツブすだめに出来てる」
「大喜利は命がけのパジャマパーティーと一緒。
 笑おうにも顔がこわぱって笑えない」
はては元凶・円楽のことを、
「落語界の徒弟制度を利用する独裁者」
と言い切る。
こういう時の玉袋筋太郎の顔がまた実にイキイキしてるのだ。
ランニソグ一丁の格好で、
顔を真っ赤にしながらどんどんハイになってくる様子がわかる。
 
また水道橋博士の方も、
「おいおい」と制止しているように見せつつ、
自分もだんだん乗っていって、
「好楽ってのは、昔つからツマんなかったんだ」などと、
一緒になって大喜利をクサしはじめる。


漫才11年の成果

典型的なボケ・ツッコミの形態を取りながら、
一瞬、その役割が変わって、
また何事もなかったように元の位置におさまる。
このコンビネーションがなかなか良いのだ。
 
特に玉袋筋太郎。
イメージ的には、博士の手の中で踊らされている感じが強かったが、
なかなかどうして!
「私どもが、川越街道でしがない旅籠を営んでおりました時、
 柳生の忍者がやってきて、その人の名は柳生博」
などとクダラないオチの噺を講談口調で
2ー3分ひとりしゃべりするのだが、
これが意外にウマい。モノローグが芸になっているのだ。
11年、脇目もふらずに漫才やってきた成果がこういう所に出ている。
 
博士の「頭脳」と玉袋の「芸人としての力」が相まって、
これはやはり東京の若手漫才(何歳まで入るのかはわからないけど)
としては今、最強のコソビではないか。
爆笑間題はふたりの力の差がありすぎるし、
キャイーンはテレビで忙しくって漫才のネタ、作ってないもんね。
 
ネタの中でも、ことに感心したのが、2時間の間、
ひとつの話題を、実に効果的にポツリポツリと何度も入れ込む点だ。

神戸の事件に関しても、別にそれ自体を話題にするのではなく、
フッと話の潤滑油のように紛れ込ませる。
たとえば
「曙と相原勇、やっぱり別れたんだっつてね」
「いや、親方が別れさせたに決まってるよ、
 ほら、東関親方っていえばあの元タンク山」
「高見山だろ!」
とか、
「何たって、今一番学歴で自慢できるのは、陸軍中野学校を出て、
 ハレンチ学園出て、そのあげぐ友が丘中学出てるやつだよな」
「そんなヤツいるか!」
とか。
言いっぱなしで、さっさと次のネタに移っていくのが小気味いい。
 
客としては、いったいまた次にいつあの話題が出るのか、
ちよっとワクワクしながら聞いてしまう。
ウマいなァ。でも、やっぱりテレビじゃ出来ないなァ。

「北朝鮮でハヤってるテレビ・バラエティ 『突撃!隣の晩ごはん』」
なんてネタも好きだったなァ。
とにかく軽い休憩をはさんで、
ふたりは2時間15分しゃべり切ってしまった。
 
もうここまでやってくれたら、本業はこれで十分。
後は余技として、どれだけテレビに合わせて、
自分たちの世界を薄めて見せられるかにかかっている。
というより、本人たちに薄める気があるのかにかかっていると思う。
 
かつて、ふたりの師匠のビートたけしは、
テレビの「オレたちひょうきん族」で余技を見せ、
ラジオの「オールナイトニッボン」で本業を見せて
バランスをとっていた。
果たして彼らにこれが出来るだけのエネルギーがあるだろうか?
 
出来なきゃ、出来ないでもいい。

 

 

 

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