突破者流儀 宮崎学×浅草キッド

『リトルモア』vol.2 AUTUMNより 

水道橋(以下水:)
   今日は、なんだか格が違うっ言うか、
    取組みにしても、番付けが違うよって感じなんですが(笑)

玉袋(以下玉:)
   ファンクラブの集いみたいなもんだろう。(笑)

水: そう言えば、この間、
   初めて宮崎さんが「朝まで生テレビ」に出られましたね。
   最初、バーチャルリアリティーの現実への侵食、
   なんかがテーマになってたけど、
   僕なんかは(北野)たけしさんがゲームを否定するときに、
   「ゲームでゴルフとかやってなにが面白いんだ、
    自分がやればいい、それがゴルフの面白さじゃないか」
   っていう。
   そういう言い方にすごく共鳴を受けてきてるから、
   バーチャルリアリティーなんて言葉は、
   一番自分にとっては対極んですよ。
   でも、僕らの世代を代表する、オタクの権威とか学者とか
   そういう人達の言っていることが、
   僕には意見が合う、合わないはともかく、
   よく分かったんですよ。
   同世代的にわかっちゃうところがある。
   でも、世代も、そのバーチャルからも、はなはだ遠く、
   むしろリアリティーそのものの人、
   宮崎さんはなんて言うのだろうと思って見てたたら、
   宮崎さん、なかなか登場されなかったんですけど、
   登場された途端に、
   彼ら(おたく世代)の議論の仕方に噛みついた。
   彼らはまず宮崎さんの話を解釈しようとするんです。

――一じっくりと聞いて?

水: いや、聞いてじゃなくて
   「この言葉はこういう意味ですね」とか
   「これはこういうことをおっしゃってるわけですね」とか言う。
   「朝生」に出てる論客の人達っていうのは
   自分の意見を討論の場に預けるんですから、
   まず、とにかく仲間入りをさせようとする。
   だけど宮崎さんはジロッと彼らを睨んで
   「さっきから俺のいうことを
    色々解釈したり説明してるけど、一切するな!」 
   「おまえらの言葉で解釈されたくないんだ!」と。
    それはつまり
   「体験のない奴がわかったふりをするな、仲間じゃない!」
   ということを言っているのかな。
   て言うより“脅し”なんだけど。(笑)
   そこではもう僕らの世代の特徴である
   解釈だけの言葉では説得力を持たない
   という感覚をすごく受けましたね。
   まあ、一言で言えばあの場で叱りつける態度は
   昔の大島渚だと
   「面白い親爺」なんだけど、
   今回は「かっこいい大人」でしたね。

宮崎(以下宮:) テレビに出る出ないっていうのは、
   メリット、デメリットという点で随分考えたんだよね。
   もちろんテレビに出れば
   本が売れるっていうのは目に見えてわかる。
   あの時「朝生」に出ていた若い人っていうのは、
   メリットがあるから出てきてるんだろうけども
   俺の場合メリットがない、という考えがあるから。
   世代の論客と呼ばれる人達との違いっていうのは、
   メリット、デメリットで物事を判断しないのが
   僕らの世代だということなんですよ。
   むしろ損をするとわかっていても、損をすることに賭ける、
   それが美学なわけですよ。
   その違いっていうのは明確に出たんじゃないかな。
   だから現場にいないやつは黙ってろっていうような
   感じがしたんだけどね。

玉: 援助交際でもなんでも「バカ野郎!」
   って叱り付ける人がいればいいのに、
   「朝生」では現状を語り合うじゃないですか。
   俺は現場主義だし、理屈じゃないから、
   感情でしか動けないんだけど。
   ああいう番組はただ酒飲んで画面に文句言ってるから、
   あの時は、久々にスッキリしたね。

――一宮崎さんは「朝生」での討論については
   どのくらい現場っぽく感じるんですか。

宮: いや、全然リアリティない。

石原(宮崎氏のマネージャー・以下石:)
   実は宮崎は考え深げに黙ってたんじゃなくて
   寝てたの。(笑)。

宮: 最後のほう(笑)。
   ディベートってものを見せ物にしたのはあの番組なんだよね。
   それなら見せ物で終わってればいいんだろうけど、
   あそこで議論されてることが
   社会の役に立っているという話になってる。
   しかしそれは本当は無意味だと。
   テレビに出る意味っていうのはあるのか、
   テレビは腐ってるんじゃないかと感じるようになって、
   この間かなり依頼を断ってるんですよ。

水: 芸人の立場でいうと、テレビってのは、
   不本意な出方をしたときは
   生き恥をさらしてるのと一緒だと思う。
   だとしても、
   それに慣れていかなきゃいけないし、
   腐ってても、共存しなきゃあならない。
   そういう、生き恥とともに、
   晒されなきゃあいけないんだけど、
   例えば、たけしさんの潔さは、
   それをものすごく高いところでやってる。
   ならば、自分たちも高いところでやれるように
   望んでなきゃいけない。

宮: 俺なんか、できれば早く文化人を辞めたいという
   願望を持ちつつ、
   テレビ媒体に出ているわけじゃない。
   まぁ、本を売るために出てたってこともあるから、
   目的達したから出ないようにしようって。
   だけどこの前なんかバラエティー番組の依頼が……

――一バラエティー! 講演の依頼はこないんですか。

宮: 自分で開く講演だけ。
   ようするに企業が協賛につかない。

水: そういう意味でテレビは企業が協賛する
   「洗練された講演会場」ですからね。
   出演者は毒を抜かれてて血清は用意されてて、
   「危険な人ではありません」
   っていう約束事がないと出させてくれないんですよね。

宮: 「朝生」の翌日、
   「サンデープロジェクト」に出たんだよ。
   で噛みついた、警察と民法派弁護士ってのに。
   住友銀行が総会屋に金配ってないって言うから、
   「そんなことはない、配ってる」って。
   翌月曜日に住友銀行本社広報部から全国の各支店に、
   「『サンプロ』での宮崎君の発言について
   お客さんから問い合わせがあった場合、
   事実じゃないって答えろ」と流した。
   同時にこの銀行はテレ朝のメインバンクなんだよ。
   それで生番組の「サンプロ」がビビった。

水: 生放送で出る限りにおいては、どんな毒抜きした人でも、
   突如、約束事を破るなんてことは、
   起こりえることすからね。

宮: だからその前に、
   具体的な名前を出さないでくれって念押しがあって、
   うんうんって聞いてた。

玉: 忘れちゃったんだ(笑)

宮: いや違う、(司会の)田原が聞いてきたんだよ。
   よし、これに乗っかっちゃえってんでね。
   あの時覆面で出てた元警察官、高島屋に天下ってたんだけど、
   俺が高島屋、高島屋って言ってたから
   帰りかけた、逃げかけたらしいんだ。
   でも生だからそこまで喧嘩できた。
   ところが生のディベートを売り物にしてる「朝生」では逆に、
   対決する緊張感が全然ない。
   僕たちは喧嘩屋だから、最初から喧嘩しに行こうと思ってる。
   一回一回をいかに過激にやるかっていう。
   でも、あんまり出ないほうがいいかなって。俺の生き方として、
   書いてるもんにしても
   不気味さがあったほうがいいんじゃないかと。
   それに気ままに生きてきたんだから、
   今さら何かに縛られて生きるのって
   冗談じゃないよね。金も名誉も組織も、
   そんなものいらない。
   また地上げや恐喝に戻れば、
   いままで稼いだ分なんて一日や二日で稼げるんだから、
   そのほうがやっぱいいよね、金だけの問題でいえば。
   金ももう、そういう意味では追いかけたくもないし、
   今度は金に追いかけさせてやろうと思ってるから。

水: テレビ出演に関連する話をすると、
   本意、不本意で言うと
   不本意な出方をするとき、
   たとえば自分のどうしても嫌いな若手の司会者に
   仕切られる番組っていうのがある。
   芸界の段階を踏んでいく道のしんどさを
   知ってる同じタイプの芸人同士だったら、
   誰が座長で誰が団員かっていう
   構造がすごくあるんですけど……。

玉: それなら喜んで水に飛び込むからね。

水  それは役割として僕らもやるんですけど、
   たとえば司会が○○○だったらNG。
   絶対出演しないってのが、
   昔、僕らの中にあった。
   ところが、ある時たまたま司会者が
   突然彼に変わっちゃうことになって。
   その○○○が司会なの。

宮: どうしたの、それで。

玉: 博士はね。
   前日から喧嘩するシミュレーションを、ねえ(笑)。


水: 「玉袋、これでもう芸人人生終わっても仕様がないから」
   なんてね。(笑)

玉: もしあいつに小突かれたり、ひっぱたかれたら、
   「俺はやるからな」なんて本番前に言ってる(笑)。

水: それこそ決死の覚悟ですよ。
   たかがバラエティーショウ出るのに(笑)。
   バカですよね。でもそうなると、
   向こうもそういう空気は読むのね。

宮: 知ってんだ。

水: 当然知ってますよ。出番前に挨拶にいくわけでもない。
   本番前に「よろしくお願いします」
   って言いに行くしきたりが
   芸界には普通あるんだけど、
   それを格下のオレたちがしないってことは…

宮: わかってたんだね。

水: そしたら相手もそれを読んでオレたちに敬語になったり。
   で、オレたちも結局「案外、あいつ礼儀正しいヤツじゃない」
   って、見直したり、
   「むしろ、ああいう風でないとこの世界売れないんだな〜」って
   逆に反省したりしてんの(笑)
   でも、なんでか男って
   絶対そういうシュミレーションやりますよね。

宮: 俺も、明日ヤクザと厳しい問題で会わなければいけない、
   会ったときにどう言ってやろう、どこで喧嘩してやろう、
   というようなことをずーっと考えるじゃない、
   それが楽しいんだよ。

石: 趣味なの(笑)。

宮: そう、趣味なの、へへへ(笑)。

水: それこそこの本(『突破者』)に書いてある、
   まわりに迷惑かけたり
   絶対に不利益なことのほうが多いんだけど、
   人に手を挙げられるよりは自分が挙げていこうっていう、
   その美意識に僕は異常に取りつかれているんですよ。
   それは僕らがたけし軍団にいるからなんですけどね。
   たけしさんってそういう男の匂い、
   価値観の固まりだと思ってる。

宮: この次、角川書店から出す本のテーマがね、
   離脱の自由というの、辞める自由。
   ヤクザが組を辞める自由、離脱の自由ってのがあって、
   一番重要だと思うわけ。

水: 愚連隊には、その自由があった、と。

宮: 離脱の自由はあった。
   つうか愚連隊は縦割り組織じゃないわけでね、
   なんとなく群れてる。
   だから辞めるときも自由だし入ってくるのも自由、
   という中に逆にものすごいパワーが出てくるんじゃないかと、
   そういうことをテーマにしたい。
   それは愚連隊だけの話じゃなくて、
   新左翼の党派の問題でもある。
   共産主義者がなんらかの理由で辞める辞めないになったら、
   それで殺されるんだもん。
   連合赤軍なんてそれで殺しちゃうわけでしょ。
   それは強さの表現じゃなくて弱さの表現じゃないかって。

水: その離脱を許さないのが…

宮: 「許さない」とか「裏切り者」とかは
   てめえらが弱いから言ってるんだろ、と。
   強けりゃ、「あ、そうかい」で終わるはず。
   僕は絶対に「あ、そうかい」で終わりたい。
   終戦直後の一番混乱した時期に、
   愚連隊はヤクザより強かった。
   愚連隊がヤクザの用心棒やってたんだから。
   それが世の中平和になって、
   組織がないと生きていけなくなった。
   それでヤクザが成立していくわけですよね。
   でもそれは本物じゃないんじゃないか、
   弱いから群れてる、集まってる。
   そんなものは見切ったっていいんじゃないか、
   また必要になったら手を組めばいいんだからって僕は思う。
   組織に属さない生き様っていうのを追及したい。
   会社員にしても、会社のために働いてると、
   クビになったらどうしようとか
   いろいろ考えるじゃない。
   会社クビになったって飢え死にしないよ、
   こんな日本なんて。
   飢え死にしかけたら悪いことやりゃあいいんだもん。
   組織なんて崩れ去る日がくるんだって考えればいい。
   日本だって潰れかけてるんだから、国そのものが。
   たけし軍団っていう軍団にも
   人間関係やイデオロギーがあると思う。
   けれどもそれ自体が潰れる日がある。
   だとしたらそれにこだわる必要はないんじゃないかと思うわけ。
   ただ問題となるのは、
   組織の外部との接触等で諸問題が生じて、
   組織を維持していこうとするとき。
   まず喧嘩が先だから、
   どうしても組織に頼らざるを得なくなってくる。
   そういうところが過分にあって、それから自由であれれば、
   人間として自由になれるんじゃないかと。

水: 実は『突破者』を読んでハッとさせられのは、
   自前で生きられるかって、
   匕首をつきつけられるところ。
   俺もやっぱ組織に支えられてるとか、
   管理されてるってことを意識しながら生きてて、
   芸人ってすごい自由だと思ってたのに、
   実はそうでもなかったり(笑)。

宮: 山口組のある親分が、
   「自分は、こんなつもりでヤクザになったんじゃねえ」
   って言うんだよ。
   ネクタイ締めてこいとか、
   何日から何日までの間、喧嘩するなとか、
   言葉使いに注意しろとか、
   そんなことだったら俺はヤクザなんかならんで
   サラリーマンになってるって。
   そういうことが嫌だからヤクザになったんだって。
   芸人なんてもっとも自由でなきゃいかんだろうと思うし、
   自由であることが芸っていうものにも影響してくる、
   そういう関係があると思うね。

――一芸人的な徒弟制度を味わったからこそ、
   宮崎さんが自前で行けと言ったことが
   よくわかるってことでしょうか。

水: そうでしょうね。
   でも、そういうムードや精神はもう希薄なものだから。
   僕らにとって、ビートたけしの魅力を伝えることすら、
   言葉が伝わらない感覚がある。
   だから『突破者』が20万部売れたじゃモノ足らない、
   年間何百万部と売れてほしいと思う訳でもあるんです。
   昔はあったものが、今はなくなっている。
   はぐれモノの精神的な土壌だとか、
   身びいきの論理だとか、
   宮崎さんが書かれていることは昔は連綿とあったはずなのに、
   今はその匂いを急激に消す方向にある。
   僕は芸界って古い世界に生きていて、
   そういう匂いが好きだから、
   理不尽を強要されながらもある種、
   芸っていうものの崇高さの為に生きている。
   その確信を持ってやってることに対して、
   古くさいとか流行らないという部分で疎外されてしまって。
 
宮: かるくね。

水: それに、自分で抵抗すらしなくなる。
   たしかにスマップのほうが、
   顔も綺麗でしかも歌って踊れる。
   エンターテインメントの世界で僕も文句はないんだけど、
   身びいきの論理で言わせてもらうと、
   どうしようもない奴らが流れついて、
   吹き溜まっているけれども、
   芸界はそこの世界だけでは
   なりたつ美徳がしっかり確実にできている。
   そういうダメな人間が生きていてもいいところでもあった。
   でもテレビの世界では、
   「芸界」って言ってるのは古い奴で、
   そんなもの関係ないといって無くしたがっている。

宮: テレビみたいなメディアが葬り去ってきたいろんなものがある。
   その中にむしろ良いものがあったんじゃないのかと言いたい。
   たとえば、日本的な会社が経営危機になってるという話で、
   年功序列や終身雇用制が駄目だから、
   国際競争力を持てないんだ、
   能力給にするべきだ、とかいろいろ言ってるけど
   果たしてそうなのか?
   そういう制度にもたれかかってしまったから
   駄目になったのではないのかって。
   だって日本的経営が戦後の日本経済を
   驚異的に支えてたのは事実だしね。
   その中身を空洞化させてしまった精神の卑しさがある。
   日本的経営のありかたを考えなきゃならない。
   国として制度的に行き詰ったところにきているとしたら、
   会社なんてもっと限界点に達しやすい。
   いつ潰れてもおかしくない、
   寄りかかれるものじゃないという発想でいくべきなんじゃないか。
   ヤクザの組織だって、
   大学だって倒産するのが出てくるんじゃないのかってね。
   芸人だったらテレビにいかに使ってもらおうかというより
  「使いたかったら来い、俺の言うこと聞け」というほうが、
   仕事が少なくなったとしても俺は好きなんだよね。

―一―組織の中でも自前で生きようって気概の奴がどれだけいるか……。

宮: いや、いないんだよ、そんなもん。ほとんどいない。
   いたとしたら、そんなところにいる奴は馬鹿なんだよ。
   でもそういう考え方を
   どこかに持ってれば楽だろっていいたいんだよ。

水: 宮崎さんは、学生運動やってて、
   組織について、
   組織は目的達成とともに、壊すべきだ、
   たとえば運動だって成し遂げたあとに
   余韻を引っ張っちゃいけないって言うじゃないですか。
   僕は本当にそうだなーって思うんですけど、

   宮崎さんはそういう考え、頭からありました?
宮: いや、ない。

水: 経験でそうなった?

宮: やっぱりね。僕らの時代は学生運動だったわけだけど、
   労働運動、市民運動をやってトータルとして
   日本の国が変わるんだ、
   というような考え方が僕らの中にあったんだよ。
   その時期は死に物狂いでその道を追いかけたわけでしょ。
   ところが気付いてみればそうじゃない。
   いつ潰れるかわかんない一定期間の中で、
   瞬間をどう輝いちゃおうかという、
   一瞬でもいいじゃない、いい光が出るんじゃないか、
   それでいいじゃないか、と。
   しょせん人間なんて人類の長い歴史から見たら
   一瞬しか生きてない。
   だとしたら、その一瞬をいかに光を放って生きたか、
   っていうね。それだけでいいんじゃないかって、
   50過ぎるとそう思うんだよ(笑)。

水: 宮崎さんは、常に首謀者で、
   ケンカ屋じゃあないですか。
   僕は昔から根っこは人と衝突するタイプじゃない。
   でもどこの場所にいても絶対に問題児になるんですよ。

玉: 酒の席では僕が問題児なんですけどね。
   火付け役は絶対僕で「待て、待て」って博士は言ってる。
   なのに、なんか「行こうぜ」って動きのあるとき、
   博士は主犯格って呼ばれて
   必ずマークされて、責任とらされるんですよ。

一――それはなぜ?

水: なんでだろう。10年前に、弟子知りしてすぐに、
   僕ら浅草のフランス座に入ったんですけど、そしたらね。
   そこが、ひどいタコ部屋状態なんです。
   労働基準法無視も甚だしい
   8時間小屋で働いてそのあと8時間こんどは……

玉: 社長のスナックで働いて……

水: その客からのチップまで巻き上げられて(笑)。

――一それ笑いごとじゃないですね。

水: たけしさんが20年前フランス座でやらされたことを
   20年経って僕らもやらされてた。
   僕らは志願して行ってるんだけど、
   お金の価値が20年前と変わってない。
   バブル全盛期でも日給千円なんです。
   それはたしかにおかしいなって僕らも気付くんですよ。
   ただ社長自体はフランス座のその下にある浅草演芸ホールを
   やってるところの興業会社から、
   ちゃんと……

玉: 僕らの給料は月十何万でてる。

水: 支払われるんですよ、
   照明係とかエレベーター係とか(笑)。

玉: 上前をはねられてる。

―一―わかりやすいですね(笑)。

水: 「あ、こういうシステムなんだ」って、
   サル山の構造がすぐわかる。
   でも僕はそれを壊そうとするタイプじゃないんですよ。
   だって、僕はそこに志願してきてるわけだから、
   貧乏を楽しんでる。
   新しい環境に順応しようと思ってる。
   でも、そこでのボスザルのやり方ってのを凄く見ちゃう。
   その社長は典型的な「支配するものは、仲たがいさせよ」でね。
   まず、組織の中にチクリを入れる奴をまず作る。
   小屋の仕事が終わって誘って飲みに行く奴を決めるんです。
   だって、みんなお金持ってないから、
   それだけでも、ありがたい。
   そしたらまず奢って、ビール飲ませて。
   「おまえは、見どころがある」なんて吹き込む。
   そいつはお金貰ってないんだから、
   本来自分の貰うものなのに、
   ただ搾取されてるだけなのに
   「社長に一生ついていきますよ」って洗脳されちゃう。

玉: 俺なんかそっちのほうから言われたもん。
   ラーメン食わされて、奢ってもらって。
   「おまえが、小屋を支えてる」なんて言われてさ〜。 
   たまに社長にサウナに連れていかれるんですよ。
   もう、それって最高の贅沢なんですよ。
   そこで社長の背中をゴシゴシやりながら昔話を聞くんだけど…

水: それが、猿のグルーミング、ノミとり、なんだよな。(笑)
   忠誠の印なの。
   爆も最初はそこに誘われてた。
   でも、そこで、しんみり聞かされる話が、
   敗れ去った人の物語で。哀しくて切ないの。
   昔たけしと一緒にコンビを組もうとしたことがあったとか、
   売れなかった浅草芸人の悲哀だったりするんだよ。
   そういう話にはほんとに素直に感動することができるんだなあ。
   これが。僕も泣きながら背中流したりしてるんですよ。
   そういう美学が好きなんだって自分でわかってる。でも、
   ある日を境にばったり、僕が誘われなくなる。

玉: そう、突然俺ひとりだけ呼ばれて
   「小野(博士)は小屋の転覆を計ろうとしてるな?」って(笑)。

水: たいしたことじゃないんですよ。
   小屋を終わった後、
   社長の経営するスナックでも強制的に働かされてるんだけど
   他の芸人も沢山いるのに、座持ちが良くて喋れる
   僕と玉袋ばかりが指名されるんですよ。
   それで「スナックへ行く当番表を作りましょう、
   今のままじゃあ不公平な形になってます!」
   と提案しただけなの。
   その夜のサウナじゃ「小野は小屋の転覆を計ってる」(笑)。

玉: 俺なんか社長に語り込まれて泣いちゃって、
   博士って本当は悪い人じゃないかって、だんだん(笑)。

水: 搾取されてるとわかってればいいけど、
   気付かないままの昔ながらの人は
   ずーっと無自覚にフランス座に住み続ける。
   そういう人はここは埋もれるためでなく、
   卒業するためにいるんだ
   ってあまり思わないんですよ。
   それが、気の毒になっちゃうんですよ。僕は。
   でもね、そんな冷や飯生活が一年あって、
   その後、小屋の経営権を巡って社長と僕たちを
   立ち退かせようとする奴らが出てきたんですよ。
   そしたら社長がみんなを集めて
   「あいつら新経営者が小屋を乗っ取ろうとしている、
   おまえらの大切な職場を奪おうとしているんだ」って
   吹き込むんですよ。
   そしたら今までバラバラだった小屋の仲間が
   団結して一丸となるんですけど。
   実はフランス座、最後の日は強制的に立ち退きをさせられたんで、
   僕ら芸人側が全員暴れたんです。
   観客が誰もいなくなってから
   踊り子さんと芸人で水道管から椅子から壁から
   全部めちゃめちゃに、
   フランス座を壊しちゃった。
   大声あげてやけくそになって泣きながら、暴れてるんだけど、
   その騒ぎを通報されてそこにドッと警察が入ってきた。
   でもね〜、実はそれを警察に通報したのは…
   社長だったの(笑)。

玉: まるで「仁義なき戦い」の金子信夫なの(笑)
   で、捕まってるの俺らだもんな(笑)。


水: ちょうどたけしさんが捕まってる時期だったんです、
   フライデー事件で。
   フランス座の目の前が浅草警察で派出所だったんで、
   普段から挨拶したりして、警察も僕らの立場もわかってる。
   マスコミに出たらヤバイぞって。
   そのときは器物破損で全員しょっぴかれたんですが、
   芸人の中に昔から小屋に住みついてる人で
   たけしさん派閥じゃないのがいた。
   オオタさんて人で素性は根っからの与太者なんだけど。
   警察の取調べ中に、警官も、
   「たけしさんのところの若い奴がやったとなると
   新聞で大きな記事になるなぁ。
   おまえらが追いだされて
   フラストレーション溜まってる気持ちもわかるから、
   じゃあ、オオタ君、君、前科もあるようだし、
   ひとりでやったことにしようか…」。
   で、その時オオタさんがね…
   「はい…」って言う瞬間は
   今まで生きてきたなかで一番感動しましたね(笑)
   この話があるだけで、この話を思いだすだけで、
   俺、芸人やって良かったな〜って思えるんですよ。

宮: かっこいいよな、それ。

玉: どうしようもない人なんですよ。オオタさんって
   でも、そういうのが好きでやってるな、完全に。
   漫画みたいな、そういう瞬間ってありますよね。

宮: そういうことはあるよ、俺にも。

水: いや、生まれてからそういう話の連続じゃないですか。
   宮崎さんは。

宮: ヤクザなんか口先だけは勇ましいこと言っても、
   実際はどう出るか、俺ら冷めた目で見てるじゃん。 
   この局面になったらこのおっさんどうするかな、と思ったらね
   十中八九逃げるほうになるね。
   どんな勇ましいことを言ってても。
   それでもひとりぐらいは突っ込む馬鹿がいる。
   その馬鹿となら一緒に手を組めるというのがあるじゃない。
   戦う、命を懸けることになる場合、
   気心の知れた奴とじゃないと嫌だもんね。
   どうしてもその他大勢の九人のほうは嫌だもんな。
   その九人を買いに策を弄する奴が多い。 
   こういうときにこうするだろうと
   思っていた通りのことをされると、
   また、感動するんだよ。
   でもしてくれる人っていうのはね、
   本当に少なくなってきてる。
   大抵はみんなバタバタしちゃう。
   常にその瞬間の問題としてずっと考えてればいいんじゃないかな。

水: 『バトルトーク突破者』の中で、
   会津小鉄の親分のところに、
   宮崎さんが兄貴の借金未返済の件で
   謝りに行く場面がありますよね。
   ところが親分は宮崎さんが返済不能である状況をよく知っていて、
   「助けられなかった自分の方が悪かった」という話になる。
   宮崎さんはその言葉自体が、かっこつけてる。
   かっこつけてるけど、かっこいいんだっていう。

宮: 「いや、俺が悪かった、勘弁してくれと言われたらね」、
   これ答えちゃうよね。ああいう人間ってのは、
   損得の計算でいえばそりゃあ損をしたことも多いんだろうけど、
   逆にいえば、
   得をするときとてつもない得をする可能性があるんだよ。

水: 次回作は…

宮: 今準備してるのは、「突破者列伝」というもの。
   僕が出会ったいろんな突破者を集めて一冊にしようと。
   最初はその中にヤクザを半分入れようかと思ってたんだけど
   それは止めるつもり。
   なぜかというと一般社会の中で普通の企業やってるほうが、
   むしろ突破者じゃないかっていう感じがしてるんですよ。
   それはさっき話に出た、
   これをやれば損をするとわかっていても
   平気で損なほうに賭けられる人間っていうのが
   突破者で、ヤクザより普通の人間のほうが多いんじゃないか。
   逆にこういう人がヤクザで、
   ヤクザのほうが市民なんじゃないのかという考えに至ってる。

水: 僕らも基本的にそうです。損なほうに賭けてる人は好きですね。

宮: うまく泳げばいい世間の泳ぎ方というものをわかってる。
   でもやろうと思ってもやれないという、
   その感性が好きなんだよね。どうしてもねぇ。
   僕の場合は、後で付けた理屈なんだけれども、
   この社会に風穴をあけたいっていうのがあるわけでね。
   例えばテレビに何回か出て本の売行きと数字を見た場合に、
   テレビに出ることの意味っていうのがわかる。
   じゃあ政治家がテレビに出ることの意味ってなにか。
   そりゃテレビに出れば票は増えるだろうけど、
   そこで票を増やして意味があるのか、というのがある。
   いわゆるパフォーマンス型の政治っていうのはね、
   テレビのメディアの問題として出てくる。
   だから菅とか鳩山とかちょっとかっこいいやつが出てくる。
   ようするに夏の暑い盛りに選挙があったら、
   手袋してるバカがいるわけでしょ。
   そういうようなパフォーマンス型になっている、
   ということがいやだなーと思うわけ。
   僕は選挙何回もやりましたよ、左翼でね。
   戸別訪問なんて駄目だっていわれても、平気で破る。
   たまたま訪ねた先が創価学会だったら
   すぐ警察にチクられてパクられる。
   一票一票死に物狂いで票を獲得していくのが、
   本当は闘いなんじゃないか。
   パフォーマンス型の、テレビに出た回数が票に繋がる
   世の中のありかたはどこか嘘じゃないのか、
   という気持ちになってくる。
   僕はそういうものに風穴をあけたいな、
   と思ってしまうわけですよ。

水: でもなかなか負け戦で、そうはさせてくれないですよね。
   テレビの1%に比べりゃ、
   活字の13万部なんて1%にも満たない。


玉: テレビ見て、こんちくしょうって思っても、
   テレビ抜きでやっていくのは実際は難しいですよね。

宮: 要するに電通とか博報堂のやってる
   方法論っていうようなものもかなり、
   世の中悪くしてるんだなって感じはするよね。
   ただ、もうかなり多くの人が見抜き始めてる。
   もっと冷めてるんじゃないか、皆ね。
   そんなもんだと思って見てるところがあるように思うんだよね。
   本の中身はさておき、『突破者』は、一切広告宣伝してないんです。
   ポリシーじゃないよ(笑)。
   金ないからやんなかっただけなんだけど。
   もちろんテレビに出たこともあるだろうけど、
   それでもあれだけ売れたということに対しては
   まだまだ捨てたもんじゃないという気はする。
   本を読んでくれた人が二冊三冊自分で買って配ってくれたりする
   ケースが多いんですよね。

水: そうでしょうね。僕も3冊買ったんですよ。

宮: だからそういう点ではまだすてたもんじゃないぞ、と。
   そういう点では浅草キッドの今後なんて考えるとさ、
   その冷めた部分をどう共鳴させていくかっていうような
   ことが必要なんじゃないのかな。

――同じ道を歩いてくる若い人達のことは見てます?

玉: お笑いとか? でもやっぱり薄いですよ、
   そういうこと思ってない人が多いし。
   僕らも育てるようなことを全然やんなかったんだけど、
   これからはやっていこうって、
   たけしさんや事務所の社長とも話してて。
   要するにたけしの遺伝子がもうなくなってきてる。
   それは芸人の中に絶対に絶やしちゃいけない。
   たけしさん直撃世代が大体30代の博士や俺くらいの世代で、
   その世代の人たちがテレビから離れちゃってるじゃないですか。
   実際見てる年代が高校生だから。
   たけしの遺伝子がないようなもののファンになっちゃってる
   そういう世代を絶対に取り戻したいですね。

――宮崎さんもロフトプラス1(新宿)でトークライブをされたり。
  テレビじゃないそういう場所ってそれなりに楽しいですか?

宮: いや全然楽しくない。
   ただ最初に行ったときに
   若い人が真面目に本を読んでくれてたことが意外だった。
   俺ら世代の人が読む本だと意識して書いたけれども、
   若い人たちに広がったのは良かったなって。
   もう少し若い人たちを意識しないといけないんだな、と。
   売るという意識じゃなくてね。

水: 『突破者』を劇画化すればもっと浸透するんじゃないですか。

宮: だから今『まんだら屋の良太』の畑中純さんが
   一生懸命考えてくれてる。

水: あ、そうなんですか。

――ところで運転免許証の一件はいつごろだったんでしたっけ?

玉: 去年。もともと個人の趣味でやってたんですよ。

宮: 何日間拘留されたの? 

水: 拘留されてないです。

宮: 調べだけで、罰金?

水: 罰金10万円以下。

――それは現実にはいくら払うんですか。

水: 10万円です。
   そんなことより四ヵ月間仕事させてもらえなかったから。
宮: そっちのほうが痛いよな。
   それによる自主規制みたいなことで、
   彼を見る眼が犯罪者を見る眼みたいになるじゃない。

玉: 笑いを取ってもね。難しいですね。

水: これは本当に封印されていて、
   テレビでは絶対ネタにもできないんですよ。

――やったっていうこと自体が?

水: ことも言えないし、
   それを報じてる新聞をテレビが映すこともできないんです。
   番組制作に関する取り決めの中で、
   警察の方からこういうことは犯罪を助長する可能性があるから、
   映さないようにして欲しいと。

玉: シャツも作ったけど、それを着てテレビに出ることもできない。

――当初は赤瀬川原平張りのインパクトを狙ったわけですよね。

水: 偽壱萬円札事件?
   別に狙ってはないけど、ああいう趣向っていうか、
   けったいなものやっているくらいのバカバカしい意識ですよね。

宮: マスコミの自主規制っていうものが、
   特に犯罪の問題に関してクリーンでなくちゃならん
   っていうような理屈があるじゃない。
   で、中場利一がパクられた。

玉: はい。『岸和田少年愚連隊』の。

宮: たまたま担当編集者が一緒なんだけども、
   『週刊プレイボーイ』はまた使うんですよ。
   出てきて最初に僕と対談して、となるんだけれども。
   やっぱり僕は、犯罪の問題で言えばね、
   マスコミの方が問題が多いよ。規制しちゃうっていうところではね。
   お笑いしてる奴がさ、笑うネタであればなにやっても、
   なんでもありなんだよ、そんなのは。

水: ましてや弁明させてほしいですよね。
   僕が本当の犯罪目的に作ったわけじゃないっていうのを。

玉: 偽台湾人みたいに思われていやだよな。

宮: そりゃ、そうだよ。だからシャレでさ、
   たとえば中場利一が今度出てきたときに
   対談はシャブシャブ屋でやろうって(笑)。   
   警察はカッカくると思うよ、そりゃあ。
   それで編集部に圧力かけるけどね。
   編集部は売れりゃあいいって言うから、
   それじゃあシャブシャブ屋でやるからそれで売れよ、と。
   『週プレ』は江夏も出てるからさ、
   二人寄ればシャブシャブ屋になる、
   そういうシャレで切り返せるところが欲しいよね。

玉: そもそも、僕らの存在が小さ過ぎるってこともある。

水: 僕らが小物で、こんなことはなかったことにしてくれって
   いうほうがスムーズに進行しますからね。

宮: それも悲しいよね。
   だからそういう世の中に風穴あけちゃおうというのが
   僕の話なんです。
   問題を今後見ていく場合に、
   たとえば中場利一がどういうふうに復活するか、
   っていうのも興味あると思うしね。

玉: 今ちょうど中場さんの小説の映画化もありますし、
   大変ですよね。

宮: 『週刊プレイボーイ』の担当者は、
   松山千春だろ、俺だろ、それと中場利一が同じ担当で、
   隣にいるやつは江夏担当してるわけ。
   だから誰がパクられてもおかしくない。
   でも『週刊プレイボーイ』の内部で、
   結局そういう人の感性の方が若者にうけてるじゃないですか、
   これをどうするんですか、
   というのがやっぱ一番説得力あったって言ってるよね。

――絶対そのほうがうけるに決まってますよね。

水: テレビと雑誌の住み分けだと思う。
   テレビがそれだけ純粋無垢なことやってるから、
   雑誌にあらぶる気持ちを求めてるっていうのは、
   凄くありますよね。
   テレビじゃそういうことは言わないんだから。
   ハナから、ないんだもん。

宮: そうだよね。
   テレビっていうのは純粋培養のきれいな話になってるからね。

水: だからますます過激な雑誌とかっていうのは
   求められてるんでしょう。

宮: 俺も活字自体に出るのも面倒臭くなってきたから、
   徹底的に過激な話しかしなきゃ、
   もう依頼も来ないだろうと思ったら逆だったね。
   まいったね、こりゃ。言いたい
   ことは言っちゃえって、ギャンギャンやったんだけどね。

石: 犯罪評論家じゃなくって、
   犯罪する犯罪評論家ですって言ってるのに、
   それを面白がられちゃうんだよね。

――テレビと雑誌っていうものがあって、
  今は皆さんが関わられてるコンピュータのメディア、
  ホームページがありますよね。
  過激って言ったらあそこが一番過激ですよね。
  何やったっていいし、少なくとも後で批判されようと、
  瞬間的には何を掲示しようといいわけで。
  そこまでいってしまうと、
  テレビや雑誌っていうのはそれを常に見てる人達にしたら
  「何やってるの?」っていう世界になっちゃう……。

宮: ただオタクっぽいよな、
   アクセスしてくる奴が全体としてね。全部匿名だもん。

水: 僕が気に入らないのは、
   正体不明であるとかそういうところなんです。
   特に掲示したり、ああいうところに書くタレコミ性っていうか、
   自分を名乗らない奴の惨めな感じ、
   さもしい感じっていうのは……。

宮: 覗きと一緒だもんな。

水: あれは嫌ですよね。

宮: 本当に、わけのわかんないメールがきたりするもんな。
   暗号みたいなやつがあったりね。

水: 僕らは漫才の中で悪口的な芸を基本としてるけど、
   漫才のネタに取り上げる対象を
   本当に毛嫌いしてやってるかっていうと、
   そうでもない場合も多々ある。
   人としての可笑しさっていうものに、
   興味もあってやってる場合の方が多いのに、
   「僕も昔からあいつ嫌いでした」みたいな投稿があったり。

玉: そんなもの本当に立ちションベンだよな。

水: むこうは俺達が喜ぶと思ってやってるんだけど、
   全然そういうんじゃないのにっていうのはありますよね。
   気味の悪さがありますよ。
   それで、彼らは俺らのことを好きなのかと思うと
   「えー」って思いますね。
   それこそ自前で生きてないですよね。
   ああいう仮想空間に、
   名前を変えて生きて行ける感じっていうのは気持ち悪いです。

宮: だからできるだけ僕がインターネットでやる場合は、
   匿名性っていうのを否定するような表現方法をとって、
   俺はこうだ、お前はどうだ、
   って問いかける方法でやっていこうかなと思ってる。
   ただインターネットに対する法規制も出てくるね。 
   その時にどうするか。
   もちろん俺は抵抗するしね。
   どうせ罰金だから、別段かまわないし。
   それはどってことないんだけどね。
   ただ、匿名でもいい、覗き的なやつでもいい、
   立ちションの奴でもいい、
   そういう奴らがさ、その時に本当に抵抗できるのかどうか。
   できなければ、どうするんだっていう。
   それ自体突き詰められていくんじゃないのかな。
   近々そういうことが起こるよね。確実に起こるよ。

水: あの神戸の少年の写真から名前から家族の構成から、
   ネットの世界ではなんの関係もない。
   あるところでは新聞でそういうことを問題にしてるけど、
   ネット上で起きてることの回覧されぶりっていったら全然違う。
   名前から家族構成から写真から、
   消しても消しても掲示されていくんですよ。
   日本でなくアメリカのプロバイダーを使えばいいとかね。

――実際名前なんて皆すぐ知ってしまい、
  そのことについてはすぐに反応がピッとくる。
  実際それはすごい速度ですよね。面白い面もあるわけでしょ、
  ホームページをやるっていうことに関しては。

水: そりゃあ面白い面もありますよ。
   僕らでいう、根本的には演芸っていうか、
   何百人の単位しか
   相手にしてないものだと、
   地方に行きゃあ見たこともない人が一杯いる。
   そういう意味ではネットに漫才のネタよせたり、
   将来的には動画、画像にしたもので寄席っていうものが
   オンライン中で確実にできるわけだから。
   デジタル映像で、自分の好きな芸人さんを並べるだけで、
   許可を取り、課金すればちゃんとした寄席になるわけだから。
   可能性としてはすごく面白いですね。
   個人個人が番組作っちゃえることになるわけだから。
   そうなったらまた競争ですけどね。
   より面白いものを作る人がどんどん出てきて。

――そうですね。

宮: でも、過激さは出てくるかもしれないね。

水: 過激さは出てきますよね。

宮: そこから何か生まれてくる可能性が……。

水: 規制される突出した表現だとか、面白さだとか、
   どんどんフライングするやつが出てきて、
   そのフライングの楽しさっていうのがありますよね。
   まとめにくい組織っていうか形態だから、
   そういうカオス的な状況があっちこっちで起こるっていう、
   そういう瞬間ってやっぱ面白いですからね。

宮: それは離脱の自由と同じなんだよ。
   組織に縛られないでね。
   本当に強い奴がでてくる可能性はあるんじゃないのかな。

――このごろチクリって多いですよね。

宮: チクリだよ、全部。
   俺が酒鬼薔薇の事件で『フライデー』の取材に行った時も、
   隣の家のおばちゃんが「こっちこい、こっちこい」
   ってペラペラペラペラ喋るんだもん。
   私のこと書かないでね、教えてあげるからって。
   何だろうこいつって思うよね。

――市民社会の異常性を感じる一瞬ですね。

石: 芸人さんたちの『フライデー』記事なんかも
   みんなチクリが多いんでしょ素人の。

水: そりゃそうですよね。
   芸能人なんか皆、指名手配くらってるようなもんですよ。
   それがお金になることわかってるから、
   芸能人って皆、懸賞金ついてるようなもんですよ。
   どこに女と入った、誰と会った。
   よし、じゃあ雑誌に売ろう、ってなってるから。
   でもまあ、賞金かけられてなんぼっていう商売だからな。
   僕たちのようなチクられても取り上げてくれないようなもんじゃ、
   何者でもないわけだから。

玉: それを平気で商売にする松田聖子とかいるわけですからね。
   堂々としてる人もいるんだもんな。

――そういうレベルで言ったらイタチごっこですよね。

玉: うーん。丸裸だもんな。

宮: 深作欣二にこの前会ったんだけど、
   例の福田和子を映画化しようとしてたんだよね。
   福田和子の時効が成立した後、
   映画化するプロデュース権を全部深作がとろうとしてたって。

――すごいな

宮: そりゃあそうだよね。
   本書きゃあベストセラーになるだろうし、
   映画にできるしね、ビデオにできるし。
   テレビの出演権から全部取っちゃおうって。
   ところがパクられたから全部パーになっちゃった(笑)。

石: でも隣でいつも飲んでたいい人をチクルかねえ。


――まあ、そういう意味では後味の悪い幕切れですよね。

水: 僕も変装して捕まったんだから、
   男・福田和子として騒いで欲しかったな〜(笑


 

 

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