浅草キッド著 「濃厚民族」
パブリックイメージよりも濃ゆく
描出された漢たち15人の肖像
「ダカーポ」 529号
評者・鈴木工(ライター)


二人揃ってツッコミ体質という印象を浅草キッドに対して抱いてきた。
漫才はボケとツッコミが明瞭すぎるくらいに分担されているが、
レポーター業では両ツッコミにシフトチェンジするからである。

思えば『浅草橋ヤング洋品店』では、
編集されたVTRのどのシーンでも、
度が過ぎた連中に膨大な言葉を重ねてはいじり倒していたものだ。
 
しかし最近、深夜番組で
政治家や財界人相手に場を回す二人を見ていると、
そのポジションはツッコミというより翻訳家の域に拡大しつつある気がする。
躍起になって全センテンスを笑いに絡めることより、
対象の全体像を理解させることでテキストの面白味を伝える姿勢を感じるのだ。
 
そんなキッドが鉄火肌の男たち・15人の魅力を公開すべく、
膝を交えたのが本書である。

ディレクター時代、撮影で女と裸でからんだ田原総一朗、
ヤクザの女と逃げた石倉三郎、
刑務所経験を奨励する百瀬博教……
エピソードのひとつひとつが、タイトル通りに濃い。
そして何が濃厚かといえば、ゲストの男ぶりが煮詰めたように濃いのである。
 
本書に登場するのは、正否はともかく、
「損得でいえば損するかもしれないけれど、でもやるんだよ!」
の生きざまを貫く者ばかり。
キッドは彼らのこうばしいエピソードを引き出しては、
パブリックイメージよりも密度が高い"漢"像を提供する。

同じ志向のもとに書かれた前著『お笑い男の星座』が
虚々実々入り混じる"超訳"であるなら、
本書は理科系技術書を翻訳するかのように丁寧に単語を拾い、
臭い立つような男ぶりに肉薄している。
 
下調べを欠かさない緻密さと並行して、
キッドの過剰な昂ぶりにも目が離せない。
極真カラテの松井館長には、
「百人組手は教育テレビで流すべきですよ!」、
ケンカ無敗を誇る安岡力也には
「オクタゴンに入るシーンが観たいです!」
と腰のツマミを「強」に設定したかのようなリアクション。

これらはより荒唐無稽な話を引き出す誘い水ではあるまい。
アントニオ猪木、ビートたけしに過剰な心酔を捧げてきた二人による
"私淑癖"が炸裂する瞬間なのだと思う。
 
そんな浅草キッド訳による男版・解体新書の中で
オチを捜すとするなら、高田延彦による帯文句
「浅草キッド、やっぱりお前ら男の中の男だよ!」だろう。

男ライセンスを発行させたら当世一と言われる高田から
堂々の免許皆伝、ありがたいかぎりだ。
しかし最近高田が原付なみに免許を乱発しているのが、
唯一の気がかりではある。


 

 

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