「馬とお金と男のロマン」 対談 関口房朗×浅草キッド

2004.5.27「Number」 602号より

 

六本木ヒルズに居を構え、
いまや深夜番組でも大人気の大富豪、関口房朗。
彼は馬を80年から買いはじめ、
いまや日米ダービーを唯一制した馬主でもある。
彼の競馬哲学は簡単。
金かけなきゃ勝てない、貧乏くさいことなんてやってられるかってな感じ。
そんな関口に自身の競馬哲学を存分に語ってもらう。

博士 会長、今日は競馬の話を聞きにきました。よろしくお願いします。

玉袋 僕らは、競馬のことはよくわからないんですが、
   会長も、お話によると、もともとは競馬にはあまり興味がなかったんですよね。

関口 そうそうそう。(会心の笑み)

玉袋 出ましたぁッ!全てを肯定する会長の「そうそう節」(芙)。

博士 それが今では、日米両方のダービーを制覇した世界唯一の男にして、
   セリでは世界中の金持ちを相手に戦い続けるフサイチ軍団の総帥。
   いかにしてそこまで登りつめたのか聞かせてください。

関口 だいたいギャンブルというのは負けたら悔しいからね、
   あんまり好きじゃなかったのよ。
   初めて馬を買ったのも、会社の女の子の両親が馬の生産者で、
   たまたま買ってくれないかと言われたからだからね。

玉袋 そこから何でのめりこんだんですか?

関口 最初、買った馬は走っても勝たないから、
   ほとんど見に行かなかったのよ。
   ところが、やっぱり他の馬主から言われるわけだな。
   「関口さんの馬、出てるけど走らんね」って。
   クソ、これはいっペん走る馬買わないかんなと。

博士 馬主同士というのは、功なり名を遂げた人たち同士ですから、
   やはり勝てないと見下した感じがあったんですか。

関口 馬主会へ行くと、今度のレースは勝ったとか
   そんな話ばっかりしてるから、なんや悔しくなってきてね。
   皆さんにどうしたら勝てるか相談したのよ。そうしたら
   「まあ、試しだな。これ、7000万。関口さん、買いなさい」と言われてな。

博士 いきなり7000万!マイホーム買えますよ!
   ちなみに、一番最初の馬の値段は……。

関口 まあ、800万ぐらい。

博士 じゃあ一桁違うわけですね。
   その7000万の馬というのは走ったんですか。

関口 うん、3つ4つ勝ったのよ。
   で、これは面白いなと。次の年は5頭ぐらい買ったの。
   全部で3億ちょっと。それで日本ダービー取っちゃった。

玉袋 取っちゃったって(笑)。
   さすがに日本ダービー取ったときというのは馬主会でも、
   「やっぱり関口はすごい」という話になるんでしょうね。

関口 いやいや、それは冷やかなもんだ。
   「関口さん、派手なパーティーなんかせんといてくれよ」と。
   馬や騎手が脚光を浴びても、
   逆に馬主は地味にしておかなきゃあ、いけない世界だったんだよ。

博士 会長は以前から、日本の競馬界は、
   勝利した馬主を賞賛しないという習慣があって、
   それが競馬界の発展を遅らせていると指摘されてますよね。
   もっともっと馬主が名誉を得るべきだし、
   馬主本人も日立っていくほうが正しいと。

関口 おっしゃるとおり。馬主がおらなけりゃ競馬できないんだから。
   だから馬主が中心になるべきなんだけれども、日本の競馬は騎手が中心。

玉袋 その習慣を打破するために
   会長がやろうとしてるパフォーマンスがあるんですよね。

関口 そうそうそう。勝った後にマイクを奪い取って、
   騎手より先に「おれが取ったんだ!」と言ってやろうと思ってる。

博士 もうプロレスですよ(笑)。

関口 日本の競馬にはエンターティンメントが足らんのよ。
   日米を比較したらなんですけど、ケンタッキーダービーであれば
   「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」をみんなが合唱するわけだ、
   16万人ぐらいの人が。
   そこからいよいよ馬が登場してきて、レースがパンパンパーンなんて始まる。
   それが日本の競馬は消防団が来て、バンドでなんかやって(笑)、
   いつも変わらんのや。

玉袋 会長がケンタッキーダービー取ったときに、
   日本から舞妓さん連れで行ったというのも……。

関口 あれは度胸いったでエ。
   自分ではもう勝つんだと信じてたけど、
   いや、もし負けたらどないしょう、日本の恥だって叩かれるかなと。

博士 だから退路を断つ意味でも。

関口 そうそう。それがパチーンとはまった。
   ああいう瞬間がいいんだな、私は(笑)。
   あのね、あそこにカップがあるでしょ。G2のやつは鋳びてあんなんや。
   でもG1のやつはああやって光っとる。
   あのG1のダービーというのはね、人間のいろんな欲望、
   名誉欲から金銭欲から、全部詰め込まれとるわけや、な。
   人生そのものや、あれ。だから私はダービー以外は要らんなと思う。
   天皇賞なら、年に2回もあるわけやからね。
   でもね、オリンピックの選手が金メダル取るのと一緒だ。
   ダービーだったら何個でも欲しい(笑)。

博士 日本、アメリカときて、残るはイギリスのダービーですね。

関口 あ、英国ダービーはね、そんなに心配ないと思う。
   英国の馬は非常に質がよくて安いんだ。
   5年ぐらい、だいたい20億かけりゃ取れると思ってる(笑)。
   パーッと買って、英国の芝に慣れさせていけばね、
   まあ私が生きてる間には取れるかな。

玉袋 おー。ダービー三冠王ですよ。人類初の快挙ですよ!

博士 でも、イギリスのダービーを取りたいというのは、
   なかなか考えないじゃないですか。
   東洋人でそういうクラシックを取ろうとは。
   もう、最初にメジャーに挑戦した競馬界の野茂ですよ。

玉袋 いや、野茂、イチローの偉業を一人で実現してますよ。

博士 会長は、海外のセリにも乗り込んでますね。

関口 あのね、セリには世界中の富豪が来るわけだ。
   そうなると日本人は隅っこのほうでビビッちゃって、
   真ん中によう座らんのや。私は堂々と座っとる。
   相手にいくら金があろうと、要するに落としたほうが勝ちなんだから、なあ。
   そんなとこに予算もクソもあるかいな。

博士 当然、予算も青天井で行くわけでしょう。

関口 周りは青天井というより青い顔してオロオロしとるけど(笑)。
   いちばん最初にセリにいったときは、羽交い絞めで止められたな。
   最終的に7億までいった馬でね。まわりが「やめとけ、やめとけ」って。
   でもそのセリが終わったときに食ったステーキのまずかったこと(笑)。
   二度とああいう負け方はしたくないと思ったな。

博士 会長伝説を言うと、世界のセリへのコネクションをつくるのに、
   あのアメリカのパウエル国務長官が介在したというのもすごいですよね。
   普通、そんな人脈ありえないでしょう。

関口 そうそうそう。パウエルさんには息子の結婚式まで来ていただいた。

玉袋 その話は長くなりますから(笑)。

関口 パウエルさんにこの人と会えと紹介されたのが
   ドバイのシェイク・モハメド殿下。
   で、メシ食って、何の話するかと思ったら、中東の政治の話ばっかりや。
   おれは馬を買いに来たんだと(笑)。
   牧場に馬を見に行ったら1頭、種馬にいいのがおったんだ、
   そしたら、これは売らんよって、まあはんとにセコイのや。
   それでな、牝でお腹に子どもが入ったやつを4頭ほど出してきた。
   血統見て「あれ、いいじゃない」と言ったらさ、
   日本から連れていった調教師が、「え、え、そんな……」。
   もうビビッちゃってだめなんだよ。
   おれもホワイトハウスからちゃんと話があって来た以上、
   1頭買って帰らんわけにいかないじゃないか。

博士 もう、スケールが大きすぎて、普通の人だと気後れしちゃうんですよね。

関口 それで「こんな高い馬じゃなく、僕が探します」いうて、
   調教師が1億円ぐらい安いの買ってきたら、これがひとつも走らへん。
   で、このおっさんではダメだと。これはもう自分で行って、やらないかんなと。
   でね、その前に作戦を練ったのよ。
   やっぱりセリに行くときには、
   ミスター関口は絶対にこの馬と決めたら降りないよと、
   そういう印象をまず作らなきゃあかんと思った。

玉袋 かましですね。

関口 かましや。それを2年ぐらいやったね。

博士 その「かまし」で、いくら使ったんですか。

関口 5億ぐらい使った(笑)。

博士 関口は決して降りない男だというのを見せるためだけに。

関口 そうそうそう。俺は降りないよと。
   で、真っ赤なネクタイしていく。
   あれが真っ赤なネクタイで来たときには降りないよという印象。
   こういうパフォーマンスを考えてやった。

玉袋 賭場みたいなもんだから、
   会長が赤ネクタイのときは降りないんだとわかると、
   相手が引いちやうんでしょうね。

博士 ケンタッキーダービーを勝ったフサイチペガサスも
   当時としては破格な値段でしょう。
   400万ドル。日本円だと5億6000万円ぐらい。

関口 でも、これはダービーを勝った後、種牡馬として80億円で売れた。
   きっちり黒字や(笑)。

博士 会長は、いつも、記録的に高い馬を買われるじゃないですか。
   それはなんか安い馬は信用してないみたいなところがあるんですか。

関口 あのね、確かに安い馬が活躍するいうのはロマンがありますよ。
   だけど、やっぱり誰が見てもいいなというやつは高い。
   黙って行って、あ、これだというのを買うのがいちばん。
   私はそういう論理でやってますけどね。

博士 そうやって買った馬を、
   アメリカまで自家用ジェットで見に行くというのがまたすごい。

関口 でも、世界の富豪たちの自家用ジェットは、ボーイングなんだよ。
   何が恥ずかしいといって、私の自家用ジェットは小さくてねぇ(笑)。

博士 銭湯で下半身の持ち物自慢してるんじゃないんですから(笑)。

玉袋 相手はアラブの王様だからね。

関口 この前は、そのアラブの王様の息子がセリにデビューしてきた。

玉袋 そっちの血統もサラブレッドだ(笑)。

博士 あと、我々と会長の関わりで言うと、「ド・ナイト」という番組で、
   会長から、視聴者プレゼント用に1億円の馬を貰ったんですよ(笑)。

玉袋 大盤振る舞いだ。
   でも、1000万円以上の視聴者プレゼントは出来ないから、
   番組預かりになってね。

博士 それで、番組でフサイチドナイトという名前をつけて、
   京都競馬に見に行ったんです。
   デビュー戦は負けたけど、今度は100%、いや1000%勝でると会長が言うからね。

玉袋 僕らも自腹で馬券を10万ずつ買いましたよ。

博士 ええ。でね、フサイチドナイトが2番人気でオッズが3倍のときに、
   会長が「よし、買う」と言って、いきなり単勝で600万買ったんです。
   そしたら1・7倍になって、1番人気になった。

関口 アハハハハ。そうそうそう。

博士 グァムのドッグレースじやないんだから!

玉袋 会長、得しないじゃん(笑)。
   しかも、結果は16頭中12位。
   一瞬にしてね、600万がパーッと消えちゃうし、
   俺たちも10万負けるしで、シューンとしちゃってさ。
   レース終わって、レストランでビール飲んでたんですよ。
   そうしたら会長が急に競馬新聞取り出してレースの予想しだした。

博士 3連複を中心に、4万円ずつ買ってたのね。
   そうしたらそれが見事、381・3倍的中(笑)。
   払戻金がなんと!1525万2000円。

関口 アッハッハッハ。そうそうそう(芙)。

玉袋 びっくりしたよ。
   会長の引きの強さというかね、ほんと、あんな興奮した夜はなかった。
   でも、1525万て、会長の記録じゃないですか。

関口 いやいや、2700万というのがあるな(笑)。
   フサイチコンコルドの日本ダービー。あれ、単勝100万買っとったから。

玉袋 まだあの上があるのか!

博士 会長の競馬に対する思いは本当に熱いですよね。
   しかし、競馬の一番の魅力は何ですか。

関口 やっぱりね、サラブレッドというのは走るためだけに生まれてきた馬でしょう。
   考えてみれば儚いもんですよ。走れなくなりゃ終わり。
   そこに惹かれるんじゃないかな。
   勝つ馬だけが自分の種を残していけるわけでしょう、ね。
   馬は分かってないかもしれんけど、
   そういう闘争本能がすごく自分にオーバーラップしてくるんだな。

博士 会長はベンチャー企業をやってきただけに、
   生存競争で負けた人は消えるんだという発想が徹底している。
   「競馬」に携わる人は、人も競い合う「競人」でなければならないって考え方ですよね。

関口 たとえばね、一口馬主というのがあるでしょう。
   あんなもの、ほとんど赤字。本当は赤字は免許取り消しや。
   公認会計士いれて監査したらどうなるか。
   ところがそれ、見てみぬふりや、JRAは。
   じゃ、新しくうちも一口馬主しようかと申請書書いた。
   そしたら「いやー、関口さんとこはちょっと控えてくれへんやろか」と。
   困るんだな、そういうとこ突っ込まれていくと。
   他にもいろいろあるけど日本の競馬の閉鎖性を改善するよう、
   これからもどんどん意見していくよ。

玉袋 でも、フサイチ軍団は、まだまだこれから凄いことになっていくんですよね、会長。

関口 まあ、去年と今年で買ったのが20億超えてますからね。
   去年が15億2000万。
   今年がまだ8億ぐらいだから、まあ、30億ぐらいいくな。

玉袋 はあー、すごい。
   日本の個人消費の冷え込みを一人で解消してますよ(笑)。

博士 最後に我々の専門の格闘技とリンクさせていただくと、
   会長は先日、会長の会社の入社式を横浜アリーナで開催して、
   ボブ・サップと戦いましたよね。

玉袋 我々も一緒にリングに上がって、助太刀して、サップに勝ってますから。

博士 会長、格闘技の世界でも今、トップですよ(笑)。
   で、今年、ついに日本格闘界の悲願であった
   タイソン戦が行われるじゃないですか。
   ここにスポンサーとして会長が絡んできたり、
   あと、PRIDEに参戦した小川直也あたりを……。

玉袋 元JRAの小川は参戦じゃなくて出馬ですよ!

博士 会長が後援したりすると、これはもういろんなところでリンクしてきますから。
   夢が広がりますよ。フサイチ軍団の格闘技部門設立とかね。
   おれたちが世界中の格闘技の選手を見て廻って、
   「会長、あの選手は買いましょう」とか(笑)。

玉袋 会長が入社式でサップと戦うといったときなんか、ウソかと思ったもんね。
   会長に不可能はないですね。

関口 うん。やろうと思うと何が何でもやってしまうというかね。

博士 そういうところがほんと素晴らしい。ほんと、男のロマンですよ。

関口 そうそうそう!皆さんも、ぜひ競馬でいい夢見てください。


 

 

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