| 労多くして功の少ないノンメッセージの毒電波
文・水道橋博士 | | 『サイキック・ミーティング』パンフレット2002 |
「世界のキタノ」に仕える、我々、浅草キッドは、 この芸能界という冥府魔道の渡世に「ナニワのキタノ」にも、 新人時代から一宿一飯のお世話になったものだ。
「青年団」と「たけし軍」の初の交流は、 それは、もう10年以上も前になることだろう。 突如、大阪で「浅草キッドを見る会」が催されることが決まり、
朝日放送のブースに拉致された。 その時、初めて聞いた大阪の深夜に流される喋りは、 実に役に立たないノンメッセージの毒電波であり、
当時、俺たちの芸風と親和力の高いものであった。 なにしろ芸能界のレールに馴染めず、 漫才師としての立ち位置、言葉の行き場を無くしていた俺たちには、
サイキック青年団は「蛇の道は蛇」であった。 しかし、これは、文字通り「けものみち」でもあった。 なにしろ、出世街道とは、無縁の道である。 この番組が持つ、メジャーにならない意志、
裏街道からの視点、リスクを伴うデメリットな発言、 それは10年以上経った今なお変わらないのではないか。 サイキック3人集のやっていることは、華やかでもなければ、楽でもない。
労多くして功の少ない、表社会や花の芸能界の灰汁を深夜に掬う作業である。 彼らは、世の中のガス抜き専門の危険物取引者主任なのである。 されど、魑魅魍魎が、跋扈する表社会。
サイキックのネタには困らない、もぐら叩きは永遠に終わらない。 やれ、ジー・オーグループの大神会長を汚れた英雄と崇め、 八王物流のイカサマを流通させ、山ア拓幹事長の性癖を笑い飛ばす。 これは、実に健全なことである。
悪趣味なシモネタが、実は、人の本質を捉え、 妄想こそが、事実の輪郭を浮き立たせ、 決め打ちこそが、予言として正鵠を射る(こともあるのだ) ただし、敢えて、言えば、言葉の熟練のプロがやれば…。 昨今、インターネット社会は、
誰でも自分が情報発信者になることが出来るようになった。 しかも匿名で、覆面で、自分が告発者、パーソナリティーなのである。 不健康な決め打ちの妄想が垂れ流される。
多くのシロートが、いっぱしのプロ気分であろう。 しかし、毎週、毎週、14年、自らの名前を名乗りながら、 メディアのなかで、狭いストライクゾーンに投げ込む、
プロの妙技をシロートはわからない。 今、野暮を承知で書けば、「醜いシロートになってはならない」は、 深夜の毒電波、唯一の隠れメッセージであったのだ。
|