★ 浅草キッド推奨コラム ★
近田春夫×テリ―伊藤  素晴らしき中年生活の知恵

週刊文春 01年5・3号 

テリー伊藤51歳、近田春夫50歳。お疲れ気味の中年男性が多いなか、剣道を始めようとしたり(伊藤氏)、タンクトップの似合う50代を目指したり(近田氏)と、このお二人はなんともエネルギッシュ。単なる「健康」とは違う、そのパワーのヒミツを伝授!


近田 “お疲れ気味の中年男性にカツを入れる”ってのが今日のテーマみたいだけど、テリーさんは今、スポーツって何かやってる? ちょっと前、剣道をやるって、いってたじゃない。

テリー (剣道の)防具は買ったけど、あんまりやってないな。やってるのは泳ぐことと走ることくらい。今日もちょっと時間が空いたんで、6キロぐらい走ってきた。

近田 泳ぐのはどれぐらい?

テリー いつもは千メートル。その後に8キロ走る。時間がないとそんなにできないけど。そういえばこの前自転車も買いました。

近田 千も泳ぐのはすごいことじゃん。俺も今日、朝の8時から45分泳いだよ。でも俺たちがこういうことをしてるのって、健康のためじゃなくて、カラダの見栄えのためのほうが大きいよね。動機は浅いところにある(笑)。

テリー うん。俺、最近のアイドルとよく話をすろけど、みんな「男はカラダが良くなきゃいやだ」っていうもんね。山田まりやなんて「男は筋肉質じゃなきゃダメ」って言うもの。

近田 男は肉体ですよ。顔や心より。

テリー 今はなんか、そういうことになってるよね。

近田 なってる。実感としてわかるもの。で、同じいい肉体だったら、歳とってるほうが絶対有利。中身は絶対こっちのほうが面 白いんだから。

テリー フフフフ。

中年からでも十分間に合う


近田 でもそのためには、若いころと違うから、ちょっと努力が必要――でもやってみると結構楽しいから、「努カ」とは違うかもしれない。泳ぎ方を自分で工夫するのって、面 白いもの。

テリー うん。俺は今51だけど、スポーツを始めたのは37歳ぐらいからですよ。学生時代はずーっと女の子のケツを追っかけてたし(笑)、その後もずっと軟派だったから、スポーツで汗をかくなんてことは37になるまで10年ぐらいなかった。

近田 俺も泳ぎは始めたのは40代の初めくらいかな。俺、体質的にはそんなに太らないと思ってたんだけど、正月に実家に帰ったとき、おふくろに「お前、太ったね」って言われてカチンときて……。

テリー そんなに太ってたの?

近田 それほどじゃなかったんだけど、中年になってくるとこういうとこ(わき腹を指して)に、ちょっと肉がついてきたりする。まずいじゃん、やっぱり。一応、俺、ミュージシャンだからさ(笑)。

テリー みんな「ヤバイ」と思ってからいろいろ始めるけど、それからでも間に合うよね。

近田 十分間に合うよ。俺なんてここ何年か、できる限りタンクトップ着て生きてるんだよ、夏じゃなくても。

テリー フフフフ。

近田 なんでかっていうと、ある日、テレビで反町隆史がタンクトップを着てるのを観たんだよ。あれを俺ぐらいの歳でやれたら偉いと思って。難しいけど。

テリー 難しいよ(笑)。俺が37でスポーツを始めた理由は、疲れやすくなったからなんですよ。それまで人前で「疲れた」なんて言ったことはなかったんだけど、その頃は平気で言うようになってて、こんな風に(椅子によりかかって)怠惰になってたわけ。疲れたら休む、という感覚だった。

近田 うん。

テリー で、ある時、こういう生き方って何かカッコ悪いって思ったの。これって、昔テレビのCMでみた「疲れたサラリーマン」そのまんまじゃないかって。そこが始まりだったな。

近田 だから、そこだよ。カッコ悪いのが嫌だっただけだよね。

テリー そう。だから今、疲れてる人って多いかもしれないけど、疲れても休んじゃダメですよ。
怠惰になっちゃう。疲れたら身体鍛えないと。

近田 やっぱりその方向に行くよね。

テリー 俺はジムで走って汗でTシャツが濡れても、自分の体温で乾かそうとするよ。替えのTシャツを持ってでも。

近田 ????? 着替えりゃいいじゃん!

テリー 確かに着替えればいいんだけれど、身体がカッカしてくると、「このTシャツぐらいは俺の力で乾かす」という考えが……。

近田 それ、何の必要もないことだよ。そんな特殊な気持ちでやってるの、テリーさん(笑)。

テリー アハハハ。Tシャツだけじゃなく水着と耳栓もいつも持ち歩いてるけど……。

近田 あ、耳栓するんだ。掩、耳栓はだめなんだ。あのシャーッとした感じが嫌で。


革のパンツで寝たワケは?



テリー 俺、セックスの時にも耳栓するよ。集中するために。

近田 そんなの何の参考にもならないよ! 困ったもんだね、この人には(笑)。

テリー 困ったもんだよ(笑)。でも最近は、高橋尚子みたいなスポーツ選手でもないのに、疲れたからってマッサージしてもらうのが流行ってるけど、あれはダメだよ。だって人に頼って気持ち良くしてもらってるんだもん。もっと自分で闘っていかなきゃ。

近田 老化を早めちゃうよね。そこのところは常にハードにしていないと面 白くないよ。

テリー うん。だから俺、今年の冬って、なるべくガサつき感のある洋服着てたんですよ。わざと肌によくないようなものを。

近田 なんかチクチクするようなやつ? 山岳部の人が着てるような。

テリー そうそう。冬ってフリースが流行ってたでしょ。でもあればっかり着てると、肌触りが良すぎて、人間の身体のほうが弱くなっちゃうような気がしたんだ。「抗菌」ってのも同じ意味で嫌い。菌になんか負けなきゃいいんだよ!

近田 そういうのってあるよね。その意味で華奢なのはダメだよ。

テリー うん。だからこの前、ふざけてだけど、わざと革のパンツ穿いて寝たんだ(笑)。だって西部劇に出てくるカウボーイだって、ほとんど着替えないし、風呂なんかにも入らない。そのまま馬の糞の横で、ジーパンのまま寝てるじゃない。

近田 それ重要なんだよ。

テリー そうだよね。

近田 俺って今、横浜に住んでるんだけど、東京で夜中飲んでると、時々電車がなくなっちゃうんだよね。で、タクシーに乗るのがめんどくさくて、そのまま公園で寝たりすると、朝起きたとき、ものすごい快感なんだ(笑)。そういうことができる自分って……。

テリー 西部劇だよね。「ローハイド」とか「ララミー牧場」みたいな(笑)。だから「ガーデニング」や「アウトドア」より、こういう西部劇みたいな感覚のほうがいいんじゃないのかな。

近田 そうだよ。俺、そう思うよ。だからこれ(Tシャツを指さして)、もう三日ぐらい着てる。こういう対談や取材があっても、別 に関係ないもの。

テリー でもそれはものぐさじゃないんだよね。

近田 違うの。まずそういうことができるか、そしてそれに説得力があるかどうかなの。つまりすごい難しいお酒落を自分の肉体を使ってしてるんだよ。だから悪いけど、俺たちレベル高いよね。

テリー 高いよ(笑)。ちょっと週刊文春の読者はついてこれないかもしれない。


「カーセックス」 vs 「抗菌」?



近田 うん。俺とテリーさんって、タイプは違うけど、こういうわかりにくいレベルの高さを競い合ってるとこがある。

テリー 一番の芯の部分で似たものを感じるからね。これをいうとおこがましいんだけど。

近田 いやいや、それは私の言いたいセリフです。この謙虚さもまた……。

テリー 似てるんだよね(笑)。でも、近田さんはやらないけどさ、俺、カーセックスってやったほうがいいと常に思ってるんだよ。

近田 テリーさん、それをいうの好きだよね(笑)。

テリー だってカーセックスって風呂に入らないでセックスするんだよ。でも「抗菌」とか言ってると、セックスする前に風呂に入るとか言いだすんだ。

近田 男も女ね、セックスする前に風呂に入るやつはバカだよ。

テリー うん。そういうの壁を乗り越えるパワーって本当に大切。

近田 絶対にそうだよ。身体を鍛える話に戻るけど、サラリーマンの人とか、とりあえずは渋谷か
ら青山一丁目ぐらいの距離でいいから、毎日歩いてみるといいと思うよ。その程度のことでも、肉体を動かす基本的な楽しさは感じることができるはずだけど。

テリー 俺もいつも行くビデオ屋まで、絶対歩くもの。車でいけばすぐだけど、歩くと20分ぐらいかかる、それだけで全然違いますよ、足腰が。

近田 でもみんな、それができないんだよ、それだけ気力がなくなっちゃってろんだろうけど。一一それにしても、日本の男の人は余りにフィジカルに参っちゃてる。こんなにみんな疲れてるのはおかしいよ。最初にちょっと気力を出して癖になっちまえば、身体を動かす快感というのはすぐ分かるはずなんだけどな……。

テリー だから「疲れたら身体を動かす」っていうのは、本当の習慣にしなくちゃだめだよ。

近田 でもそれってね、もしかしたら生まれついて体質かもしれない。テリーさんや俺はそういう思考回路を自然に持つことができたけど。

テリー それはそうかもしれない。

近田 じゃ、ずっと肉体的なことを話してきたんで、話題を変えましょうか。精神的には何ですかね、いま、中年の男に重要なことは。

テリー 精神的には……。

近田 こういうとこで恋愛のことを語るのは野暮だよね。

テリー そうだよ。だって中年の恋愛ってカッコ悪いじゃない。奥さんや子供がいたら不倫になっちゃうし……僕はしちゃうけど。

近田 女性を探してると、そのことに時間が使われるから、仕事がおろそかになっちゃうよね。

テリー うん。だめだよね。それよりも、仲間同士で会うとき奥さんを連れてきて、料理を「お前 から食へろよ」って言ってるやつの方が、よっぽど男だと思うよ。

近田 それが一番男らしい男だと思うよ。ほんとに真面目な話。

テリー 上等だよね。

近田 だから、普通のサラリーマンが普通に奥さんと愛し合ってセックスして、それで50、60を迎えてる人が一番カッコいいよ。


子供用XXラージの服を着る


テリー さらにそれで身体を鍛えてる人がね(笑)。

近田 でもテリーさんって、本当に若いよね。俺より年上の人で、俺より若いと思う人って、テリーさんしかいない。俺、本当に嫉妬するもの、その若さに。

テリー それは自分では分からないよ。

近田 でも同世代で、昔一緒に遊んでた人がいるじゃない。いま会うと、みんな自分より老けちゃってるでしょう?

テリー うーん、俺、はあんまりそうは思わないな。こいつ、俺より若いなあって思う昔の同級生 って、結構いるよ。

近田 そうか。俺、そういう知り合いってあんまりいないんだよね、でも、テリーさんのような着こなしをしてる人って、同級生にいないと思うんだよね。

テリー それはいないね。(上着を指して)今日だってわざとちっちゃめのMサイズを着てるんですよ。だからある程度体型を維持してないとこういう恰好はできない。

近田 結局そうなるよね。俺もGAPの子供用のXXラージの服がサイズ的にちょうどぴったりで時々 着るんだ。子供用のって、シルエットが大人のものと違うんだよ。これは知り合いの高校生のお下がりもらったんだけど(笑)。

テリー それってさ、骨董晶を自分で発見するのと一緒だよね。代官山や原宿の高級ブティックで物を買うのと全然違う。こっちは「情報」だからつまんないんだよね。

近田 そう。情報であるってことは、どんなものも過去のものだっていうことだからね。だから俺たちにとって重要なのは、情報ではないことだよね。

テリー うん。そんなのは叶姉妹にまかせときゃいいんだからさ。

近田 情報になる前のところで捕まえないと面白くない、という気持ちがないと。ということは、重要なことは好奇心なのかな。

テリー 好奇心だね。

近田 それはでかいよね。

テリー うん。近田さんの好奇心って、ずっと音楽をやってきたことの影響が大きいと思うんだ。いろんな音楽を聴いて「この世代のこの人はこういう音を出すんだ」とか、「あの人がこういう思考回路で作った音は新鮮だなあ」っていうふうに、音楽のなかのいい部分を吸収していったんじゃないかな。

近田 それはあるね。でもテリーさんにも俺にとっての「音楽」みたいなものはあるでしょう?

テリー うん。それは自分のテリトリーの中にある。そしてそれは人それぞれだと思うよ。

近田 そうだよね。それが株だろうとなんだろうと。

テリー そうそう。競馬や野球、サッカーだって……。

近田 同じことだよ。その時代ってものがそこにあるんだから。時代の移り変わりはその中には絶対入ってる。そこから何を感じるかが問題で、実は職種とかはあんまり関係ないことだよね。


音楽を「見て」楽しむ方法



テリー 俺もそう思う。だから俺も築地の実家の王子焼屋を継いでたとしても、なんかそこで、あ、時代はこうなんだなあ、と考えてたと思う。

近田 それと、物事を見るパースベクティブの位置を変えることもいいと思うよ。例えばそれこそ週刊誌の記事で、「株が下がった」とか「物価が下がった」っていうのがあったとする。でもその一個一個の現象を考えるより、「そういうことを週刊誌が報道するのはなぜか」というのを考えることのほうが大切だと思う。それを考えることで、俺は何か得るものがあるね。ちょっとわかりにくいかもしれないんだけど。

テリー 俺が近田さんが週刊文春に連載してる文章を読むのも、それと同じことだと思うよ。だって例えばモーニング娘。の音楽を聴いてわからなくても、近田さんがそれについて書いた文章を読むと、大人でも楽しめるじゃん。それって、音楽を聴くんじゃなくて、見て楽しむことだよね。

近田 うん。

テリー プロレスなんかもそうだよ。「見るプロレス」と「読むプロレス」がある。

近田 読むほうが面白かったりすることってあるよね。

テリー 夕刊紙に出てる風俗の記事もそうだよ。紙面で女の子を見ていいなと思うのと、実際にそこに行くことは違うことだもんね。実際の女の子と会うと、がっかりしちゃうこともあるけど(笑)。あ、そうだ、今度スチュワーデスと合コンするんだけど、近田さん、来ない?

近田 行く行く。

テリー この前もやったんだけど、おかしかったですよ。

近田 いいねえ。でもさっきの話と矛盾しない? さっきはしみじみと「一番カッコイイ男とは」なんて話してたのが……。

テリー 俺はいいの。あれは俺以外の人の話だから(笑)。

近田 そうか、俺も一応賛同しちゃったけど、そういう問題じゃないよね。

テリー 全然オッケーですよ(笑)。よしッ、早々にやりましょう!

 

 

 

読み逃げ厳禁! 読んだら 感想メール を送りなさい! 目次に戻る