| 著者と60分/『お笑い男の星座2』私情最強編 |
| 『週刊文春』2003年9月11日号 |
水道橋博士、玉袋筋太郎の二人は自ら一緒に書店を廻り、 ステージ後には即売会を行う。 「作家よ、書を持って街へでよう!」
販促活動の成果で版を重ね、 十万部を売り上げた前作から二年半を経て 『お笑い男の星座2(私情最強編)』が発売された。 発売から2カ月、
重松清、鹿島茂、中野翠、三谷事喜……といった作家陣からも 好評を博している。 ビートたけし門下中、唯一浸才師として たけしイズムを継承している浅草キッドの“活字漫才”第二弾だ。
「本の内容に自信がないから販促活動をやっているんだ、 と思われるのは困る。自分たちが作った自信ある商品だからこそ、 賞味期限内に味わってもらう努力をしてるだけ。
よく本が売れないとか、若者の活字離れとか言われるけど 作家本人に売る気がなく、書斎に引きこもっているのが 出版不況の原因であって、本が売れないわけじゃない」
と、博士は鼻息荒い。 彼らの全活動の根底には 何人かの偉大なる「イズム」が熱く流れる。 そのひとつが猪木イズム。
「ジャングルが危機に瀕しているならジャングルを守るとか言ってないで、 ジャングルを作ればいい」。 怒涛の販促活動はこのアントニオ猪木の言葉の実践なのだ。
本書は序章から終章、番外編に至るまで、 各界の著名人との「濃い」関わりを、ルポルタージュで構成。 序章では 「編集者に理不冬こくのは、梶原一騎イズムの継承なんだよぉ!!」
と、出版不況に関して正論を展開しつつ編集者を吊るし上げる二人が登場、 「一騎イズム」をのっけから炸裂させている。 続く本章では鈴木その子、寺門ジモン、飯島直子、江頭2:50、
百瀬博教、格樹技関係者など著名人約八人が登場するが 「凝り性になってきた」ことで前巻よりも一章一章の描写を工夫し、 推敲を重ねたことで、厚みが出て
「ばかばかしいんだけど、 どこか泣けてしまうような読み物に仕上がった」と言う。 その最たるものが第五章「江頭グラン・ブルー」。
九〇年代のヒット番組「浅草橋ヤング洋品店」(テレビ東京)で、 水中でいかに長く息を止めていられるかを競ったコーナーが舞台。 「この地上生活に適しない生き方しか出来ず、私生活が出鱒目で、
ハメを外してはドジばかりを踏んでいる、あの男のどこが ジャック・マイヨールなのか?」 深淵を覗いた超人、江頭2:50の姿が語ちれていく。
また「自称最強! 寺門ジモン」では「奇人」ではなく 「超人」と自称するダチョウ倶楽部・寺門ジモンの 「もし、こいつと闘ったら、こいつに勝てるのか?
そして、どうやって仕留めるか!」という夢想・妄想(?)ぶりを披露。 その実証として 「ヤッ山寵りもやったし、自然石だって割ったし、
十円玉を指で曲げるのも挑戦したよ!」 と三十年にわたる過酷な寺門流肉体トレーニング法の数々を紹介。 さすが、漫才師だけあって、喋り上手は聞き上手。
寺門の「変人」ぶりがおかしさのうちにも実感できる内容だ。 「漫才も文章も、言葉をあてこんでいく作業。 テレビでは時間的な制約や番組によっては言えない話もある。
だから俺たちは喋りと文章、より適したメディアを 選択しているだけであって、タレント本として扱われるような 文章を書き流しているわけじゃない」と博士は言う。
「梶原一騎、角川春樹、アントニオ猪木の 三つのキ印に思春期の情操教育を受けた」 六〇年代生まれならば「おおっ!」とばかりに懐古する
梶原マンガヘのオマージユや仕掛けもふんだん。 だが 「俺たちと同年代の連中ならすでに読者になっている。 違う年代の活字中寺者の連中にこそ読んで欲しい。
狙いはおもしろ本のNo.1」 と読者への販促アピールも忘れない玉袋。 「一生懸命、ばかばかしいことやって、 裸で生きてる奴らをテレビじゃ語れないから活字で語る。
取り上げた連中のことを暴露してるわけでもないし、 毒舌吐いてる気もない。 でも、だからといって俺たちの本読んで癒されちゃ違うだろって。
俺たち煽って煽って煽りまくってんだから」 “知的毒舌漫才師”の才気溢れる一冊である。
(取材・構成 宗田
薫)
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