読書感想文 『お笑い 男の"書評"の星座』


「BROTHER」vs「お笑い男の星座」観戦日記 Part.1
              
佐賀県武雄市・みずの徳郎 29才

この観戦記録を24時間楽しませてくれた「北野チャンネル」と
月曜深夜に熱く興奮させてくれた「ビートニクラジオ」、
そして偉大なる「オールナイトニッポン」に捧ぐ。
 
その日!!2001年2月2日ー。
僕は、家から車で一時間ちょっとかかる映画館へ愛車を快調に飛ばしていた。
僕の愛車は、日本一の信頼を誇る自動車メーカー三菱の、
白い軽トラックSuperDX号。
オールナイトニッポンが聞けるAMラジオを搭載している。
一人で地磯に釣りに行くにはもってこいの車だ。
助手席には、黒いラジカセとさっき買ったばかりの「お笑い男の星座」。
映画「キッズリターン」のサントラを聞きながら今日という日に感謝する。

今日は、僕と交代で働く嫁さんのバイトが休みで子守から解放され、
公開初日に見に行けなかった「BROTHER」を鑑賞出来るのだ。
ひさびさに街へ出るので、
上映時間まで書店をまわり予約していたのに入手出来なかった
「お笑い男の星座」を探すつもりだったのだが、
会社から帰宅してすぐに、頼んでいた本屋から
今日入りましたとの電話がありダブルで嬉しい。

「ブックマート日の出といいますが、はるおさんいますか?」
と、徳郎をはるおと読み間違えた様子にすかさず、
「のりおですが・・・。ちなみに僕はホモじゃありません!」
と、切り返しておいた。
しかし、なんというグッドタイミング!!
猪木を信じる者は、救われるのだと勝手に思い込み着替えを済ませると、
本屋へ直行した。

「カバーをお付けしましょうか?」
との店員の質問に、
「いえ、結構です!」
と、明るく答える。せっかくの表紙が、周囲の人に見えなくなるのが嫌だからだ。
<男なら、カバーは付けるな、中でだせ!>と、心で叫ぶ。
夕方なので多少渋滞しているが、気分は爽快。

「やもめのジョナサン」になった気分で映画館へ向かった。
無事、映画館へ到着。
「お笑い男の星座」を手にいざ出陣!!
9時25分の上映時間までしばらく時間があるので、
隣接するショッピングセンターに入り食事を取る事にした。
たくさんの店が並んでいる。

僕はカレーが食べたくなったので、喫茶店風のカレー屋に入る事にした。
カウンターの後ろの水槽では、様々な熱帯魚達が泳いでいる。いい雰囲気の店だ。
店の奥から、かわいいウェイトレスが出てきて笑顔でこう言った。
「いらっしゃいませ!お客様、何名様ですか?」
「ひとりです」
「おひとり様ですね。タバコは吸われますか?」
「吸いません」
「お好きな席へどうぞ!」
<あなたの乳を吸わせてください>と、言いたくなるようなかわいい声に案内され、
窓際のテーブル席に座った。

迷わずカツカレーを注文する。もちろん辛口である。
運ばれてきた氷水をグイッとあおり、早速「お笑い男の星座」を開いて見る事にした。

<序章 猪木イズム>
この言葉だけで、体に気合いが入る。
あぁ、待ちに待ったこの本が読めるのだ。僕は幸せな気持ちでいっぱいになった。

キッド人生劇場
お笑い男の星座
この物語を偉大なる梶原一騎先生に捧ぐ。

おぉ、なんたるこの響き。男の勝負は、一瞬で決まる!!
僕の大和魂に火がともる。
男と男のプライドのリングで幕が開いた。
ヒクソンvs高田・・・。マルコ・ファスvsアレクサンダー大塚・・・。
血湧き肉踊った、あのときのビートニクラジオが蘇ってくる。
ゲストは、真のプロレス大賞MVP、
アレクサンダー大塚と活字マット界の影武者ならぬ落ち武者、ターザン山本。

このときのターザンは、雄弁だった。
「これからのプロレスラーは、両刀使いにならなくてはいけないんですよぉぉぉ!」
ターザンの言葉が今でも耳に残っている。
あの放送から一年ちょっと、マット界でとんでもない出来事が起こる。

2000年5月1日ー。
最高に弾けた、桜庭和志vsホイス・グレイシー。                   
一時間半以上という試合時間をまったく感じさせなかったその内容は、
少し落ち込みかけた僕のプロレス人生感をガラリと変えてしまった。
この時のビートニクラジオも最高だった。
まさしく、プロレスファンだけでなく世間をも巻き込んだリアルタイム速報!!
僕は、スカパーに加入していて本当によかったと感じ、
日本の男に生まれたことを誇りに思った日でもあった。

お笑い界の最強タッグチーム、浅草キッド!!
彼らはいったいどんな試合を見せてくれるのか!!
魂の十五番勝負!!
僕の頭の中で、活字のリングのゴングが打ち鳴らされようとしていた。

「カツカレーのサラダになります。ごゆっくりどうぞ!」
テーブルの上にサラダが置かれ、
透明な容器に入ったらっきょうと福神漬けがその隣に並んだ。
運んで来た娘は、さっきのウェイトレスとは違っていた。少し残念・・・。
でも、カレーを食べる前にこんなに体が熱くなるのは初めての経験だ。
手に汗を握る激しい攻防戦となるであろう。
新世紀にふさわしい大会になる事をいのりつつ僕はページをめくる。

第一戦のゴングが鳴り響いた。
路上の現金王こと宮路社長とタンクトップファイター坂本一世組が
いきなり先制パンチ攻撃、しかしここは百戦錬磨の浅草キッド。
宮路社長に敬意を表しつつも巧みにこれをかわす。
テレビのギャラは、一切貰わないという社長に男を感じた。
なつかしい浅ヤン技をくりだして、キッドの勝利となった。
試合後、坂本一世のマイクアピール「本気です!!」には笑った。
この試合が直接の原因になったのかは定かではないが、
他界された宮路社長の冥福を心から祈った。

ここでカツカレーの登場!!
しばらくの間、本を閉じることにした。
カツカレーを食べながら表紙を眺める。
男よ、戦え。
いい言葉だ。カレーの辛さよりググッと来るものがある。
男よ、食え。

一気にカツカレーとサラダを胃の中に詰め込み一息つくと、
壁に張ってある「単品カレーを注文された方のみ、
お好きなドリンク100円」の紙に目が止まり、コーヒーを頼むことにした。
コーヒーを注文し、再び本を手に取った。

続く、第二戦は入場シーンから緊張が走る。
元不良女番長こと和田あき子とロック界の破壊王YOSHIKI組の入場。
花道での激しい睨み合いの末、リングインする前にケンカバトルが勃発!!
急遽、試合変更となり和田あき子vsYOSHIKIのシングル対決となった。
ガチンコよろしく、このあととんでもない結末が用意されていようとは思いもしなかった。
まさかの力士乱入に場内騒然!!
裏で曙が手を牽いているのではないかとの声が飛び交う。
曙軍団、遂に結成か!!
おっ、リングサイドに憲子夫人の姿が・・・。
ひょっとして曙軍団のマネージャーではないのだろうか。
曙軍団vs花田軍団の全面対決に発展するのか!実現すれば、絶対見てみたい!!
この試合、ノーコンテストとなった。

運ばれて来たコーヒーにも気づかず、第三戦へ突入した。
この試合も変更を余儀なくされた。
博士は、試合前の記者会見の席で
ロシアの怪物アレクサンダー・カレリンに挑発行為をあびせ、
その場でカレリンズ・リフトをまともに食らい大ケガをしてしまったのだった。
負けん気の強い博士は無理を承知で出場しようとしたのだが・・・・、
そこへ我らが兄貴前田日明の登場!!
真の男とは、・・・・。
そこにリングがあるからリングに上がり続けるのであろうか。
引退を決意しての参入に、ただ涙、涙、涙。
あぁ、男の潔さとはここにあるのだ。
これからも、ファンの心の中に実在し続ける事であろう。

コーヒーをひとくち飲んだ。
時計に目をやると、まだ一時間くらい時間があるので、もう一戦観戦することにした。

第四戦。
超ビッグカードの試合だ!
夢の対決、B&Beet対浅草キッド!!
世紀の師弟対決が、いままさに始まろうとしている。
ビートたけしと島田洋七。
現在ある意味において浅草キッドに匹敵するほどの強さをもった強豪コンビである。
今世紀のベストバウトになることを強く願う。ゴングが鳴った。
試合開始直後、激しいホラ合戦を展開するが、早くも場外乱闘ならぬ場外乱交!!
あっけなく両者共にリングアウト負け。
試合終了のゴングに両軍とも気づかずお姉ちゃんの取り合い合戦が続く・・・。
洋七師匠には、このままカミングアウトしてほしくないなぁと思った試合だった。
オーロラビジョンには、スタンド席で見ていたきよし師匠の寂しそうな顔が映し出されていた。
そういえば、この大会にきよし師匠は出てこないのかなぁ?
がんばれ、きよし師匠!!
キヨシ軍団がついてるぞ!!

僕は、コーヒーを一気に飲み干し、席を立つことにした。
さぁ、今度は「BROTHER」の出番だ。
期待に胸をふくらませレジへと向かった。
伝票と千円札をウェイトレスに渡す。
頭の中は、もういろんな事を想像していた。
そういえば、主人公の名前は、たしか山本だったよなぁ〜。
僕は、ターザンの顔を急に思い出して吹き出してしまった。
心を弾ませ、いざ映画館へ・・・。
「お客さ〜ん!おつり忘れてますよ〜!」
僕の背中に黄色い声が当たった。
        
                     Part.2 へつづく



「BROTHER」vs「お笑い男の星座」
 観戦日記Part.2
             
佐賀県武雄市 みずの徳郎 29才

真のお笑い芸人と何か?
真のお笑い芸人とは・・・それはしゃべりだけでも勝負できるヤツのことをいう。
活字&トークの二枚看板を背負ったレスラー浅草キッドの闘いはつづく・・・。

脳内の活字エンドルフィンが先走りしていた僕は、おつりを貰う事をすっかり忘れてしまっていた。ウェイトレスが慌てて走ってくる「おっと、お姉ちゃん。そのつりは要らねぇよ。あんたのスマイル料金だ。遠慮しないで取っときな。」と、かっこつける言葉を考えるヒマもなく、「あっ、どうもすいません」と、素直に受け取り外へ出た。
時計の針は、あと15分で9時になろうとしている。カツカレーで胃の中は満たされていたが頭の中はまだまだ満たされてはいない。外の冷たい風に触れるとも、心の興奮は冷め止まぬまま僕は映画館の中に入っていった。
平日のこの時間にしては意外にも混雑している。あちらこちらでカップルが、幸せそうに談笑していた。いったいこの中で「BROTHER」を観に来た人は何人ぐらいいるのだろうか?僕は「BROTHER」のチケットを買う為、窓口に並んだ。
上映開始時間が9時を過ぎると料金が1200に下がるのでこんなに盛況しているのかと思うと嬉しい反面、料金を安くしないと客が来ない現実を見たような気がしてならない。
料金を窓口に支払いチケットを購入すると、すぐさま売店でパンフレットを買った。締めて2000円。この買い物が高いか安いかが今日決まるのだ。興奮度数がまた上がる。
透明な袋に入っている週刊誌サイズのそれには拳銃の写真と包丁で指を詰めようとしている写真がそれぞれ裏表を飾っていた。
<しぶいぜ、たけし!!>
上映開始まであと30分を切った。
この映画館は、完全入れ換え制なので案内があるまでロビーで待たなくてはいけない。
時間まで再度「お笑い男の星座」を観戦しよう。<さぁ、宣伝だぁ宣伝!!>と少し気合いを入れ、入場整理が行われているすぐそばの壁に立って観戦する事にした。
第五戦は、第一戦で灰になった宮路社長とロールス・ロイス綱引きマッチとデスレース1994の疲労がたたって死んだ石井院長の追悼フィルム試合が上映される事となる。
二人の遺影を手にした喪服パンツ一枚の浅草キッドが白いロールス・ロイスの屋根に座り場内をゆっくりと一周していく。運転手を勤めるは、復活したキリングセンスのハギこと
萩原正人。スタンドのビジョンではフライングレディーが大きく映し出され、続いて宮路社長と石井院長の壮絶なバトルの数々が流れた。あちこちですすり泣く声や鼻をかむ音がしている。熱い涙を拭きながら改めて合掌・・・。
哀悼のテンカウントが終わるか終わらないかというその時、予期せぬ事態が浅草キッドの二人を襲った。
突如、三塁ベンチからネズミの格好をした三人組が乱入!!キッドの乗ったロールス・ロイスへ直行していった。場内またも騒然!!
なんとその中の二人は、お笑いスターウォーズ軍団Cー3POとR2ーD2の爆笑問題であった。もうひとりは、僕の知らない男。いったい誰なんだ・・・?
ダッシュ一番、太田がロールス・ロイスに駆け登るや、こともあろうに博士の持っていた宮路社長の遺影をすばやく奪い取り床におもいっきり叩きつけてしまった。無数に飛び散るガラスの破片。唖然とするキッド達を尻目にすぐさま飛び降り、砕け散った遺影をこれでもかと言わんばかりにネズミの足で踏みつける、踏みつける。
この屈辱的な行為に博士キレる、キレる、キレる!!すぐさま戦闘モードに突入した。
ロールス・ロイスの屋根から怒りのミサイルキック。後頭部にもろに直撃した。倒れる太田。すかさず後頭部へキック、キック、キックの連打・・・。場内は、観客全員の両足で雪崩のような轟音を上げた。
<博士っ、カレリンに受けた傷はもうだいじょうぶなのか!!>と少し心配した。
玉ちゃんも負けじと田中に対してムーンサルトを放つが惜しくも自爆・・・。片キン分外れてしまったのだ。無念、無念、無念。
そこへ待ってましたとばかりに後ろにいた謎のネズミ男が出てきて玉ちゃんに近寄り、見下す様な顔つきでおもいっきりつばを吐き、脇腹に蹴りを入れた。田中もそれに続く。もちろんそれを博士が見逃すはずがない。
「H〜〜〜〜」
と博士が叫びながら田中と第三の男もろとも
ハンセンばりの素早いラリアートで逆襲。
見事、ポンキッキ帝国軍を沈めたのであった玉ちゃんを抱き抱える博士。興奮のるつぼの中を玉ちゃんが担架で運ばれていく・・。
傷だらけのキッド達をロールス・ロイスから降りてきたハギが見守っていた。
<かっこいいぜ、キッド!!>
会場、割れんばかりの拍手、拍手、拍手。
男達に乾杯だ。
「ウィ〜〜〜〜」
ここで、僕はトイレタイムに入る事にした。
出すものは出した。時は来たれり。やがて入場のアナウンスが始まった。
「9時25分より上映の・・・」
<待ってました!!>
「ダンサー・イン・ザ・ダークを・・・」
思わずガクッとくる。それに反してどっと押し寄せる人の波。同じ上映開始時間だったのだ。それにしてもうわさどうりのすごい人気だ。しばらくするも「BROTHER」の案内はなかった。隣にいたカップルがたまらず係員に問う。ただいま清掃中との事。ひとまず安心。「BROTHER」を観に来たカップルもいるのだ。<ちょっと嬉しいぜ・・>
「9時25分より上映の・・・」
<待ってました!!>
「BROTHERを・・・」
<よっしゃあ!!>
僕の戦闘開始時間が始まった。
真っ先に並んだカップルのあとへと続く。観戦客は意外に多い。すぐ入場が始まった。フロアの中へ小走りに入るやいなや、前から四列目のど真ん中の席に陣取る。晴れ晴れとした気持ちに包まれる中を開始まで高々と本を上げて第七戦を観戦しようとしたその時、神のいたずらが僕を襲った。
なんと僕の左側の一つおいた隣に、きれいな若いお姉ちゃんが座ったのだ。脱いだ上着を僕の隣に置く。どきどきするもなぜ僕の隣にと心は一瞬で釘付けになった。時々、「お笑い男の星座」に目を向けている。だんだん別のどきどき感が高まってイクようだ。
<お姉ちゃん、他にもいっぱい席が空いてるぞ>と、よけいな事を考えているとお姉ちゃんの横に飲み物を持った男が座った・・・。
<男よ、戦え・・・。>
そうだ、僕には、「お笑い男の星座」と言う心強いパートナーがいるではないか!!
気にすんな、そんな事。
さぁ、気を取り直して第七戦だ。
第七戦、「ジャイアント馬場三回忌追悼タッグマッチ」とだけ銘打ったこの試合。大会当日になってもキッドの対戦相手は発表されなかった。今度の相手は、いったい誰なんだ。上映直前なのだが、こっちの試合もわくわくする。場内が暗くなり、歓声が上がった。
たとえ百万回聞いたとしても、そのつど思いが変わるあのテーマ曲が会場を虜にした。
もう何も要らない、裸一貫のテーマ曲・・。
そう、男なら誰しもが一度は聞いた事のあるあの名曲。「炎のファイター」だぁ〜。
「イノキッ、ボンバイエッ!!」
<やったぁ〜猪木の登場だぁ〜>
と、魂が叫ぶ。猪木教バンザーイ。
<いや、まてよ。もうひとりは誰なんだ?>
猪木のリングインに続いて、曲は馬場のテーマ曲に変わった。王道テーマにのってジャイアント馬場のマスクを被った赤パンツの男が大手を振って登場。場内大ブーイング!!
猪木とは、対象的なその肉体は、見るに耐えない中年の老化現象をおもいっきりさらけ出していた。マスクからは所々、金色の髪の毛がは見出ているのが見える。しかし、醜いながらもどこか男の魅力を感じさせる男だった
<おっ、後ろに続くセコンド陣がたかし軍団のTシャツをきているぞ、まさかあいつでは?、?、?>
という一番良い所に上映開始のゴングが鳴ったのでやむなく本を閉じる事にする。パンフレットと「お笑い男の星座」を重ねながら、<何も考えるな、ただ感じろ!!>と期待に膨らんだ心に強く命じた。
上映開始!!
予測のつかないストーリー展開を予想していた僕の心をぶっとばす程の勢いとものすごい
スピードで走る直球勝負の映画だった。
しかもその玉は、鉄の塊のように重い、重い、重い。かっこいいキャラクター達が死んでいく中で、最も印象的だったのがコリンの死であった。こいつだけは、死んで欲しくないなぁと願っていたのだが・・・。
それに負けないぐらい印象的な出来事が僕の身に起こった。今も度々思い出す程である。
隣のお姉ちゃんが、30分に一回ぐらいの感覚で僕の顔に視線を浴びせるのだ。ちらりとではなく、ビビビと感じる視線をだ。
いっておくがこれは妄想ではない。感想だ。
チャックが空いているのかと何回も確かめた程である。そのうち僕の方側の肘掛けに頭を支えた腕を乗せ、僕の方に足を向けて両足を組んで僕の心を乱しに乱した。一回パンフレットと「お笑い男の星座」を床に落としたぐらい乱れさせられた。一つ席をおいているとはいえ、その距離わずか30cm弱。僕も肘掛けに腕を乗せて頭を傾ければ当たっちゃいそうだった。繰り返し言うが、これは妄想ではない。
<おいおい、隣は彼氏じゃないのかい。映画みろよ〜>
僕は、所々不謹慎にも映画よりもお姉ちゃんの事で頭がいっぱいになっていた。
男の悲しい・・いや、うれしいさがを佐賀県人だけに強く感じてしまうのだろう。
いろんな思いがクロスしながら映画終了!!
<感無量・・・・感終了・・・・>
僕の心は暗く沈んでいたが、かろうじて下半身だけは元気いっぱいだった。頭寒足熱とはまさにこのことを言うのだ!!
エンドロールが始まるや隣のカップルは何も無かったかのように(本当に何も無かったのだが)席を立ち、階段を上がっていった。
バイバイ、お姉ちゃん。末長くお幸せに・・
帰りの駐車場までの距離は、とてつもなく遠く感じた。疲れ果てた僕の心を癒してくれるのは、僕の愛車しかいない。カップル達が、世間でいうかっこいい車で次々と夜の世界へ消えていく中を僕は白く輝く軽トラックへと
乗り込んだ。
男のエンジン音がスタートした。
<さぁ、家へ帰ろう>
今の僕にラジカセは必要ない・・・。ただ心の音を静かに聞くだけだ。
午前0時半、無事家に到着。
二人の子供は、もう夢の中・・・。
嫁さんに感想を聞かれ「すごい写真展を見に行ったようでかっこよかったよ」とかっこつけて話すもなんだかむなしい。パンフレットを見ても何も感じなかった。それならばと「北野DAY」を取りだし、ビールを飲みながらメイキングを見るがあの時の興奮は帰っては来ない。
途中でビデオを消し、就寝。
その夜、僕はこんな夢を見た。
2003年正月ー。
「BROTHER完全版」公開の年!!
試写会に当たった僕の心は何か吹っ切れたように心踊っていた。
またも一人で映画館へ向かう。
ポスターの水野春郎以外の映画評論家立ち入り禁止という文句もかっこいい。
2002年の暮れ、電撃ネットワークファンのおかげでスターウォーズ・エピソード2がまたもや大ヒットを記録、それに反するかのように「BROTHER完全版」の前評判はボロクソに言われていた。そこへもって勝負にでる男、監督北野武・・・。
しかしそこには、とんでもないストーリーが待ち受けていたのだった・・・。
マフィアに殺された山本は、実は「菊次郎の夏」の菊次郎だった。宝クジで大当たりした菊次郎がたまたまロスへ来ていた所を山本に間違えられ撃たれてしまうのである。
日本では、替え玉がばれて山本を消すためにプロのヒットマンが雇われる。
ヒットマン役はもちろんサングラスをした渡哲也。組長役を忘れるくらいの迫力とバツグンの存在感。やっとの思いで再会したデニーを殺され怒りに燃える山本・・・。
ビートたけしvs渡哲也。砂漠のモーテルで男と男の最後の対決を繰り広げた。30分にも及ぶ激しい死闘の末に山本が勝利する。一人生き残った山本は、日本に帰国。その後、石垣島に渡り一人で民宿を開くのだった。そこへなんとチンピラ役の浅草キッド登場!!料理にケチをつけてボコボコに殴られ、従業員にされてしまうオチだった
僕は生まれて初めてスタンディングオベーションを体験した。
まさに男のスタンディングマスターベーション!!
夢の中でひさしぶりの満足感にしばらく浸ったのであった。
かろうじて夢精はしなかったが・・・

     Part3へとまだまだつづく

注)冒頭のヤツとは、谷津嘉章のことでもある。





「BROTHER」vs「お笑い男の星座」
 観戦日記 Part.3
             
佐賀県武雄市 みずの徳郎 29才
不感症の男達に告ぐ!!
この映画を観ずにして、またこの本を読まずにして多くを語ることなかれ。
自分のおつむでありのままを素直に感じてみろ。

2001年2月3日 午前7時ー。
久しぶりにいい夢を観る。寒いけれど清々しい朝だ。
北野武の攻撃は、終わりを告げた。
しかしながら映画「BROTHER」は想像力を高めるいい起爆材にはなったようである。
よし、今度はキッドの反撃だ!!
「お笑い男の星座」を持って元気よく出勤しよう。
途中、朝食のパンを買うため寄った「セブン・イレブン」で「大五郎」を買うYOSHIKIを発見する。朝から焼酎を買うYOSHIKIに男を感じながら、こうなったらKONISHIKIの弟子になるしかないぞと勝手にエールを送る僕であった。
無事、遅刻せずに会社に到着。今日の仕事は、いつにも増して気合いが入っている。正午まであっという間だった。
おいしい愛妻弁当を2分で食べ終えるや否や、お茶を飲み干し観戦準備をしっかりと整える。ファィト一発、気合い十分。さぁ、浅草キッドプロデュースによるキッド祭りの続きをたっぷりと堪能することにしよう。
本を手に取ると再びハイテンションモードに突入した。この気持ちは、息子達が「タイムレンジャー」のイントロを聞いただけで飛び上がって喜び、ファイティングポーズを構える気持ちに近いものがある。僕は第七戦まで一気に時間の壁を越えた。<クロノチェンジャー!!>
第七戦に到着。
「浅草キッドvsアントニオ猪木&にせジャイアント馬場」にせさえ付かなければ本当にとんでもないカードだ。
すでにリングインしている猪木と謎のマスク男。浅草キッドの入場を待つのみである。それにしても玉ちゃんのケガが心配だ。博士の体だってボロボロのはず。かたずを飲んで見守る中、映画「キッズ・リターン」のテーマ曲が流れて来る。浅草キッド入場!!スポットライトが二人を照らし出すや歓声が拍手に変わった。
ひどく足を引きずった玉ちゃんを博士が肩を貸して支えながらゆっくりと花道を進む。にこやかな顔の二人に暖かい拍手と声援が送られる。<そこまでしても、リングに上がるのか?>僕はまたも泣いた。
猪木がロープを開けて二人を迎え入れる準備をしている。やっとの思いでリングにたどり着く浅草キッド・・・。猪木の粋な計らいに一礼してリングに入る二人。その一方でマスク男は、早くしてくれよと言わんばかりにコーナーにもたれ掛かり一人ロープを揺らしている。<なんなんだこいつ・・>試合に先立って元子夫人より両チームに花束の贈呈が行われた。謎のマスク男を除いた三人のコールが終わりいよいよゴングを待つのみとなった。マスクを取らないふてぶてしい態度にまたもブーイングが飛ぶ。片手を振り回し気合い十分の博士と両手を大きく上に上げたマスク男が中央で向き合い、歯を食いしばりながらもロープを潜る玉ちゃんとさっきまでの笑顔と一変した殺気に満ち溢れた顔の猪木がそれぞれのコーナーのリング脇に立つ。会場を埋めつくす期待と緊張と興奮が暴走寸前手前までいっている。男の勝負を決める時の鐘が鳴った。

           決戦のPart,4へとつづく



「BROTHER」vs「お笑い男の星座」
 観戦日記 Part.4  
佐賀県武雄市 みずの徳郎 29才

僕は、猪木のビンタを食らいたい男の一人です。

その男、狂人につき・・・。
開始のゴングとともに、素早く馬場マスクを脱いだかと思いきや博士の顔にむかってそれを投げつけて一瞬のスキを作る様は実に大人毛なかった。マスクの蒸し風呂効果で大量の汗が吹き出していた落ち武者風の金髪男の目は完全にイってしまっている。どこまでが額かわからない頭の眩しさに観戦客も一瞬凍り付いた程である。しかしその風体からはとても想像出来ない早業で博士の斜め下に身を屈めて入り込み、両手を広げたまま真っ赤な毒霧を顔面に吹き付け終わるや自分の真っ赤な歯を指さし自分をアピールしまくる様子には50男の底知れぬパワーを感じずにはいられなかった。金髪ハゲ男はすかさず背中に回り込み顔を押さえる両手を後方に羽交い締めると今度は口を大きく開けて博士の首筋にガブリガブリと噛みつき出した。鮮血が走る。悲鳴を上げる女性客、これに歯を食いしばって耐える博士。
ワンテンポ遅れて止めに入るレフェリーの手にも噛みつき、反狂乱を演じ続ける。転げ回るレフェリー。僕らはブーイングしか出来ないのだろうかと思ったその時、赤く汚れた何かがマットに転げ落ちた。何だ・・・?金髪ハゲ男の口が梅干し状にしわしわになっている。まさか・・・。
それはまぎれもなく入れ歯であった。
このチャンスを逃すはずのない博士は、右足のかかとで股間を蹴り上げる。またたくまに形勢は逆転。股間を押さえてピョンピョン飛びながら入れ歯を探す金髪ハゲ男。会場、失笑の渦。よろよろしながら金髪ハゲ男が入れ歯を取ろうとする寸前に博士は入れ歯をリング外に容赦なく蹴り落とし、とどめのローキックを一発お見舞いした。たまらず猪木にタッチする歯なしの金髪ハゲ男。ポンプのような音を出して息をしている。<いよいよ教祖様の御登場だ・・・。>
金髪ハゲ男とは一度も目を合わせずに、ゆっくりとロープを潜りリング内に降り立つ男猪木。年齢不詳の鬼が静かに両手を上げてじっくりと間合いを詰めている。僕は口の中にたまったつばをゴクリと飲み込んだ。

      怒涛のPart.5へつづく


 
その1
その2その3その4その5その6その7その8 /その9/その10


 

 

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